2010 Fiscal Year Annual Research Report
ガンダーラ美術の系譜 製作技法からせまる中央アジアからインドの彫刻研究
Project/Area Number |
10J06405
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内記 理 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ガンダーラ / 考古学 / 製作技法 |
Research Abstract |
私の研究の目的は、技術的な視点からガンダーラ彫刻を検討することにあるが、その基礎作業として、資料の収集が必要である。しかし、現在、研究対象地であるパキスタンおよびアフガニスタンは治安上調査隊が立ち入るのは困難であり、現地で資料を集めることは不可能である。一方、中央アジアおよびインドの彫刻資料は美術品として世界中に拡散しており、北米大陸にも欧米諸国と並んで豊富な資料をもつ。本年度の研究の主眼に置いたのは、これら北米大陸に渡った中央アジア・インドの彫刻資料の収集および調査であった。夏に約1か月、そして冬に約2週間、アメリカ・カナダ諸都市の博物館・美術館が所蔵する資料を実際に調査して回り、法量の確認、写真の撮影等をおこなった。書籍などで公開されている資料の他、倉庫内に収蔵されている未公開の資料も併せて調査することができた。結果、ガンダーラ石彫にみられる接合の技法、接着の技法等、用いられた技術にはさまざまなヴァリエーションがあることが判明した。 北米の調査で判明した事実と、これまでの私の研究結果とを照らし合わせ、龍谷大学の学会で成果を発表した。ガンダーラ彫刻の接合の技術は大きく3つに分けることができ、それらは考古学的な手法の出土地分析によって、時期区分できることを明らかにした。これまで美術史的な視点でのみ語られてきたガンダーラ彫刻について、技術的な視点と考古学的な視点を前面に押し出した見解の発表は、当該地域の今後の研究においても大きな意味をもつと考える。 国内においては、京都大学人文科学研究所が所蔵する中央アジア・インドの発掘資料のうち、ガンダーラの土器を調査し、整理した。出土地分析をさらに一歩進めた詳細な出土地点分析という、これまでガンダーラ土器研究においてはなされてこなかった研究視点により、土器の使用場所と建物の役割を明らかにした。
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