2010 Fiscal Year Annual Research Report
大きいグループにおける協力行動に対する遺伝的浮動を考慮した確率論的アプローチ
Project/Area Number |
10J06423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 瞬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 協力 / 有限集団 / 寛容さ / 固定確率 / 公共財ゲーム / 数学モデル / 三分の一則 / 囚人のジレンマ |
Research Abstract |
協力行動の進化は、生物学において主要なトピックであり続けてきた。コストを支払って他者を助ける無条件の協力者は、お返しをしない無条件の非協力者に搾取される。もし協力してくれなかった場合には、その将来において協力を差し控えることによって、協力者が非協力者を罰するならば、繰り返される相互作用において、協力行動が実現しうることが議論されてきた。しかるに、私のテーマである大きいグループにおける相互作用の場合は、状況がもう少し複雑で、協力を差し控える行為は非協力者のみならず協力者をも罰する結果になりうる。したがって、大きいグループにおける相互作用においては、協力者が非協力者に対して非寛容なときに協力が最も進化しやすいかどうかは明らかではない。そこで、私はn人囚人のジレンマの確率論的なモデルを解析することによって、協力者がいくらかの非協力を我慢して協力し続けたときのほうが、協力者がそのような寛容さを持たないときよりも、協力行動は進化しやすいことを示した。また、それに加えて、協力行動の進化を最も促進する寛容さの最適なレベルを特定した。一方、協力行動の進化のメカニズムとして提唱されてきたものの中に罰がある。しかるに、罰は、罰する者と罰される者の間の報復の連鎖を引き起こすかもしれなく、罰さない者は罰する者よりも有利であるという「2次のジレンマ」を引き起こしもする。そこで、これらの難点を取り除くことができる「協調した罰」と呼ぶメカニズムを考案した。そして、協調した罰がある場合、協力が有限集団に置いて進化的に安定な戦略になりうることを示した。
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Research Products
(1 results)