2012 Fiscal Year Annual Research Report
大きいグループにおける協力行動に対する遺伝的浮動を考慮した確率論的アプローチ
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10J06423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 瞬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会行動の進化 / 有限集団 / 数理モデル / 包括適応度理論 / 進化ゲーム理論 / 囚人のジレンマ / 互恵性 / 不完全情報 |
Research Abstract |
社会行動の進化に関して、理論的な研究が数多くなされてきました。大抵の研究は無限集団を仮定しますが、有限集団を考えるときのみに起こる社会行動の進化の重要な面があります。ここでは行為者と被行為者の間の負の血縁度と、遺伝的浮動に着目します。ここでは一般のn人ゲームを使って有限集団における社会行動の進化を研究します。まず、利得行列の変換を導入し、利得行列の変換を使って、混合した集団における戦略の比較優位と長期にわたる進化ダイナミクスを研究します。続いて利得行列の変換を一般化してマルチレベルセレクションがあるときの進化ダイナミクスを記述します。これらの解析は完全に進化ゲーム理論の枠組みの中であるが、本研究の結果は部分的に包括適応度理論と部分的に適合するように思われます。この結果はTheoretical Population Biologyに受理されました。ここまでは一般の社会行動の話ですが、社会行動の中でも、自らの適応度を下げて、相手の適応度を上げる利他行動の存在は説明を要します。ヒトは、献血をしたり、選挙にいくなど、大きいグループにおいて利他行動をしますが、これは、互恵性(利他行動をされたら利他行動をし、利他行動をされなかったら利他行動をしない性質)で説明できる、という研究が最近行われました(Kurokawa & Ihara, 2009)。しかし、この研究は、利他行動をしているか否か、という情報が、グループの他の個体に行き渡る、という不自然な仮定を置いていました。そこで、この仮定を外し、解析を再度行いました。その結果、この仮定を外しても、互恵性で大きいグループにおける利他行動の進化が説明できることが明らかになりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Shun Kurokawa and Yasuo Iharak6Evolution of social behavior in finite populations: a payoff transformation in general n用layer games and its implicationsがTheoretical Population Biologyに受理されました。また、Shun Kurokawa and Yasuo IharaによるThe evolution of reciprocity in sizable groups when information is imperfectが現在投稿準備中です。このことから、おおむね順調に進展しているといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
The evolution of reciprocity in sizable groups when information is imperfectが現在投稿準備中です。数理モデルの構築、解析に関しては既に終えましたが、この論文を書き上げる上で、実証研究の先行研究を集めることが重要だと考えるので、それを行い、その上で、論文を書き上げます。
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Research Products
(2 results)