2011 Fiscal Year Annual Research Report
成熟ネコ一次視覚野でのNogo阻害による機能的、形態的な可塑性の回復
Project/Area Number |
10J06736
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
米田 泰輔 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視覚野 / 眼優位可塑性 / ミエリン / ネコ / 成熟動物 / 弱視 / コラム / 神経回路 |
Research Abstract |
本研究では成熟ネコでの薬理学なミエリン除去による、眼優位可塑性の再活性化と、弱視モデルネコの弱視からの回復を目的として研究を行なっている。本研究は齧歯類による研究で得られた知見を基に、齧歯類以外の成熟動物においてはじめて可塑性の回復と弱視の治療を目論むものであり、ヒトでの弱視回復治療の重要なステップとなることが考えられる。またネコには齧歯類になくヒトが持つコラム構造が一次視覚野に存在するため、可塑性回復時の多面的な神経回路構造の解析を行える利点がある。本年度は前年度に確立した成熟マウスへの浸透圧ミニポンプよる一次視覚野への薬液投与法を基に、ミエリン除去作用のある薬剤、lysolecithinによる眼優位可塑性の再活性化を目的として検討を行った。 まず予備検討として成熟マウスでのミエリン除去による眼優位可塑性の再活性化を試みた。浸透圧ミニポンプでの視覚野へのlysolecithinの投与により、一定期間組織が脆弱化し、神経細胞は視覚反応が低下した。しかし投与から2週間の回復期間を設けることで、成熟マウスに眼優位可塑性を再誘発することに成功した。この時眼優位可塑性の再誘発が生じた範囲は、投与カニューレから約1mmの範囲であり、これは抗ミエリン塩基性蛋白抗体を用いた免疫染色でのシグナル減少範囲と概ね一致した。以上のように、マウスにおいてlysolecithinによるミエリンの除去と、それに伴う眼優位可塑性の再現が確認された。このプロトコールを用いて成熟ネコにlysolecithin投与を行った所、眼優位可塑性を再誘発することに成功した。現在lysolecithin投与によるコラム構造の変化を明らかにするために、光学計測、解剖学的手法による解析を行なっており、今後弱視モデルネコへのlysolecithin投与による弱視回復を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、成熟ネコでlysolecithin投与により眼優位可塑性が再誘発されるかについてsingle unit recordingと光学計測により計測することを計画していた。計画通り、single unit recordingにより成熟ネコで眼優位可塑性が再誘発されたことが明らかになり、現在光学計測によるコラム構造の観察を行なっている。よって計画は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
コラム構造は約0.5mmに及ぶため、その解析のためにはより広範囲にlysolecithinを投与する必要がある。現在浸透圧ミニポンプによる投与法と並行して、局所多点注入によるlysolecithin投与方法の検討を行っている。また解剖学的なコラム構造の解析のために眼球へのトレーサー注入による眼優位コラムの可視化に取り組んでいる。これらの手法が確立し、コラム、単一細胞レベルの解析系が立ち上がった上で弱視回復実験を行う。
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