2010 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエをモデルとした行動を制御する神経回路の単一細胞レベルでの解析
Project/Area Number |
10J06772
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
櫻井 晃 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ショウジョウバエ / 本能行動 / 性的受容性 / 動物行動学 / 神経科学 |
Research Abstract |
進化の諸過程において、雌の性的受容性は重要な役割を果たす。例えば、ダーウィンが定義したように、性淘汰の引き金となるのはほとんどの場合において雄に対する雌の選択性である。本研究では、ショウジョウバエの雌が雄の求愛をほとんど受け入れなくなるspinster変異体をtoolとして用い、雌性的受容性を制御する脳神経回路の同定を目指している。本年度は新たに、雌の性的受容性を制御する脳神経細胞の候補として、嗅覚情報を脳内で処理する2次投射ニューロンであるD細胞群(仮称)の同定に成功した。D細胞群を構成する神経細胞の数は約50であり、これは脳内の全神経細胞数である約10万に対して非常に少ない数である。雌性的受容性を制御する脳神経回路を高い解像度をもって解析できたといえるだろう。また先行研究によって、D細胞群とシナプスを形成する嗅覚受容ニューロンが既に同定されており、それらがそれぞれどういった匂いに応答するのかについても多くの知見が蓄積されている。さらに、特定の嗅覚受容ニューロンのみを不活性化または興奮させるためのtoolが既に存在する。そのため、嗅覚を介した雌性的受容性を制御する神経ネットワークを網羅的に同定するための足掛りとして、本成果は非常に意義深いものである。また、spinster変異体のD細胞群においてリソソームの肥大化が起きていることを発見した。これらの細胞内に自家蛍光をもつ物質の異常な蓄積が見られることと合わせて考えると、spinster変異体はリソソーム機能の破綻による細胞内老廃物の蓄積によって、D細胞群が変性したため、雄の求愛を受け入れられないという可能性がある。spinster変異体を用いた解析は進化学の観点からも重要である雌性的受容性を制御する神経ネットワークの解明に資するのみならず、神経変性疾患の分子メカニズム解明にも役立つことが期待される。
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Research Products
(1 results)