2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J06802
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大濱 晶生 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 天文学 / 星間現象 / 星団形成 |
Research Abstract |
2012年度の研究成果は巨大星団NGC3603に付随する分子雲を発見し、星団の形成過程を明らかにした。NANTEN2望遠鏡を用いてNGC3603方向のCO観測データを観測し、速度の異なる2つの巨大分子雲を各星団方向に発見した。Spitzer宇宙望遠鏡によって観測された中間赤外線とCOとの空間分布を比較することで、2つの分子雲がこの星団に付随することを示した。これらの分子雲は20km s^<-1>という大きな速度差を持つが、この速度差は重力的には束縛できず、星風による膨張によっても説明できない。そのため、この速度差は元々の両分子雲の相対速度を表すと考えられる。 この結果を受けて、柱密度10^<23>cm^<-3>程度の分子雲が相対速度約20km s^1で互いに衝突し、分子ガスを局所的に圧縮し、高密・高圧な環境のもとで高い質量降着率を実現し、巨大星団が形成されたとする解釈を提案した。サイズと密度の異なる分子雲の衝突を扱った数値シミュレーションにおいて、分子雲は衝撃波によって圧縮されて重力的に不安定性になり、高密な分子雲を形成することが示されている(Habe & Ohta 1992)。また、分子雲同士の衝突の代表的な時間尺度は100万年程度であり、星団の最も若いメンバーが局在して形成される傾向も説明できることを指摘した。この研究はApJに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
巨大星団Westerlund2、NGC3603、RCW38、[DBS2003]179方向のCO輝線を観測し、その結果として、巨大星団が2つの分子雲の衝突によって形成した起源を発見した。この成果をApJに投稿し、2編の論文を出版し、1編の論文を審査している。現在、2編の投稿論文の準備を進めているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、大規模星団に付随する分子雲のサンプル数を増やすことと、数値シミュレーションとの比較を行うことである。前者はCO(J=2-1)輝線とCO(J=1-0)輝線との強度比を求めることと、Mopra22m望遠鏡による高分解能観測を実施する。2013年4月からNANTEN2望遠鏡でCO(J=2-1)輝線を観測する予定であり、2013年度Mopra望遠鏡の観測時間を確保している。後者は北海道大学の羽部教授との共同研究を進めて、我々が観測したCOのデータと比較することで分子雲の境界面での巨大星団の形成過程を明らかにする。
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Research Products
(2 results)