2011 Fiscal Year Annual Research Report
東地中海再考 多地域資料の比較からみる北レヴァント文化の果たした歴史的意義
Project/Area Number |
10J06828
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Research Institution | Ancient Orient Museum |
Principal Investigator |
長谷川 敦章 (公財)古代オリエント博物館, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | テル・エル・ケルク / テル・ガーネム・アル・アリ / 北レヴァント / 東地中海世界 / 後期青銅器時代 / キプロス / ホワイト・スリップ土器 / 施文技術 |
Research Abstract |
本研究では,大型遺跡の調査や地中海世界からの影響に偏っている北レヴァントの先行研究を顧み,中規模遺跡など北レヴァント内の周縁地域の調査,在地物質文化の検討,シリア内陸部を含めた北レヴァントの周辺地域との比較検討を行い,従来の偏った歴史像を再構築する。第2年目の本年度は,昨年度実施したフィールド・ワークを中心とした基礎資料の調査成果をまとめ,学会等で公表することにより議論を深めることを主な活動としてた。6月に筑紫女学園大学で開催されたにて開催された日本西アジア考古学会第16回大会にて「北レヴァント内陸部における東地中海系遺物について-テル・エル・ケルク1号丘遺跡を中心に-」という発表をおこない,本研究テーマの主要な対象地域の一つである北レヴァントにおける東地中海との関係を論じた。また,同学会で「ユーフラテス河中流域の青銅器時代拠点集落の発掘調査-テル・ガーネム・アル・アリ遺跡の集落構造を中心に-」という発表をおこない,同じく主要な研究地域であるユーフラテス中流域に位置する遺跡の調査成果を中心とし,遺跡の集落構造に焦点をあて,当該地域の特徴を明らかにした。また,去年度に引き続き,受け入れ研究機関である古代オリエント博物館収蔵資料の調査研究を行った。その成果の一部は,11月にはノートルダム清心女子大学で開催された日本オリエント学会第53回大会にて「紀元前2千年紀後葉のキプロス土器の独自性と流通-古代オリエント博物館所蔵資料の分析を中心に-」というタイトルで研究発表をおこなった。この発表は昨年度から継続してかる当館所蔵のキプロス土器を対照とした研究発表である。本研究の重要なテーマの一つである,北レヴァントと東地中海世界の相関関係をキプロス土器の流通を中心に論じ,キプロスの独自性の背景にある北レヴァントとの交流についても考察した。 また,本年度は当該博物館所蔵のキプロス土器であるwhite Slip wareをより精緻に観察し,特にその施文技術についての系譜について研究をおこなった。その成果は,当館の研究紀要に掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は3月の東関東大震災の影響があり,3月は言うに及ばず4月も下旬まではこれまでと同様に研究を進めるのは困難であった。また夏から調査地のシリアの政情が不安定になりフィールド・ワークが困難になった。しかし,昨年度充分に行ったフィールド・ワークの成果を今年度はまとめ,学会等で公表し議論を深化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこれまでのフィールド・ワークの成果をまとめ,学会発表することで議論を深めることが,できた。それを踏まえて来年度は,さらに論を進めていく予定であるが,当初予定していた補足的なフィールドワークは,昨今のシリアの政治的状況を鑑みるに,困難であると思われる。しかし,今年度の学会での議論において,これまでに蓄積することのできたデータで充分に研究を進めていくことができるとがわかった。今後は許されるならば短期間の補足調査をおこない,各地位頃の論考を一つの論考へとまとめていく。
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