2012 Fiscal Year Annual Research Report
東地中海史再考 多地域資料の比較からみる北レヴァント文化の果たした歴史的意義
Project/Area Number |
10J06828
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Research Institution | Ancient Orient Museum |
Principal Investigator |
長谷川 敦章 (公財)古代オリエント博物館, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | テル・エル・ケルク / テル・ガーネム・アル・アリ / 北レヴァント / 東地中海世界 / 後期青銅器時代 / キプロス / ホワイト・スリップ土器 / 施文技術 |
Research Abstract |
本研究では,大型遺跡の調査や地中海世界からの影響に偏っている北レヴァントの先行研究を顧み,中規模遺跡など北レヴァント内の周縁地域の調査,在地物質文化の検討,シリア内陸部を含めた北レヴァントの周辺地域との比較検討を行い,従来の偏った歴史像を再構築する。最終年度となる第3年目の本年度は,天理参考館での補足的な調査を行うとともに,これまでの研究成果を積極な公開に重きをおいた。 天理参考館での調査では,前年度行った受け入れ研究機関である古代オリエント博物館収蔵資料の後期青銅器時代おけるキプロス土器の比較資料として,テル・ゼロール出土のwhite Slip wareの資料調査を行った。この成果を踏まえ,white Slip wareの施文技術についての系譜について研究し,本研究が対象としている,後期青銅器時代の東地中海で重要な役割を果たしたキプロス島の社会変遷を,土器の施文方法の変化から繕いた。その成果を日本西アジア考古学会第17回大会にて発表し,これらの成果を巡って,同地域を対象としている参加研究者と議論を交わした。 また,ワルシャワで行われた国際学会"8th International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East"にて,本研究で中心となるつの地域の一つ,エル・ルージュ盆地の拠点遺跡テル・エル・ケルクと,ユーフラテス中流域に位置するテル・ガーネム・アル・アリ遺跡での発掘調査に基づく新知見を同地域を対象としている海外の研究者に対して公表し,広く意見を求めた。 また,本研究の成果を広く一般向けに公開する目的で,東北学院大学で開催された公開シンポジウム「ユーラシア乾燥地域における河水利用一水が育む歴史・文化・環境」講演をし,ユーラシア乾燥地域という大きな枠組みで本研究の成果を位置づけを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な調査対象地であったシリアで,内戦が激化しフィールドワークが困難になった。しかし,これまで蓄積してきた成果および,国内でのミュージアムワークでそれを補うことにより研究を進めることができた。また最終年度である今年は,成果を国内外の学会で公表することにより,多くの研究者と議論をすることができ,研究を深化させることができた。
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