2012 Fiscal Year Annual Research Report
スペクトラルグラフ理論に基づく構造変化分析法の開発
Project/Area Number |
10J06908
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
尾下 優子 九州大学, 大学院・経済学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 産業連関分析 / スペクトラルグラフ理論 / 産業クラスター / 構造経路分解分析 / サプライチェーンマネージメント / 原油価格上昇圧力 / CO_2排出構造 / 産業構造変化 |
Research Abstract |
本年度は、本プロジェクトの最終年度として、主に、これまで開発したモデルと分析結果の整理、これからの研究の方向性の検討を行った。 具体的には、これまで行ってきた拡張型の構造経路分解分析を用いたサプライチェーン由来の二酸化炭素排出量の変化要因の特定分析と、産業連関法とスペクトラルクラスタリング法を組み合わせたモデルを用いた資源・二酸化炭素集約的な産業クラスターの特定分析の結果を連結し、持続発展型の産業構造の構築に向けた総合的な提案・考察を行った。同時に他手法との比較分析など、各々の手法の頑健性の検討も行い、より包括的な手法の開発にも努めた。 また、災害等のリスク分散を目的とし、構造経路分解分析と構造抽出法を応用し、災害等による局地的な生産停止によるサプライチェーンへの影響分析を可能とする新たなモデルを開発した。47都道府県地域間産業連関表を用いた東日本大震災の分析結果からは、東北の震災エリアの農業部門の生産停止による関東を中心とした飲食業などへの影響や、震災エリアの自動車部品部門の生産の停止による愛知や静岡などの自動車部門への影響、さらにはこれによる輸出への影響など、地域レベル・サプライチェーンレベルで初めて、定量的に影響を分析した。同内容は、2013年3月に行われた第8回日本LCA学会研究発表会にて報告され、2013年7月に開催される第21回国際産業連関分析学会にて発表予定(発表採択済み)である。 さらに、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のSangwon Suh准教授との共同研究として、3ヵ月間の在外研究期間中に、上記のモデルとアメリカの産業連関表を用いた、アメリカの二酸化炭素集約的な産業クラスターの特定分析も行った。本研究は、2013年6月に開催される国際産業工コロジー学会にて発表予定(発表採択済み)である。加えて、マテリアルフローの情報から、資源集約的な産業クラスターを検出し、戦略的なリサイクルシステムの構築や製品設計への提案についても産業総合研究所との共同研究を進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた日本における資源価格上昇に伴う経済影響分析や、二酸化炭素の排出構造の把握に留まらず、アメリカの二酸化炭素の排出構造の分析や、戦略的な資源獲得戦略(リサイクル戦略)に至る広範な分析を行うことができた。また、新たな産業クラスターの検出手法の開発やそれを応用した構造分解分析手法の開発だけでなく、構造経路分解分析を応用・拡張したモデルを開発することで、サプライチェーンレベルでの二酸化炭素排出構造やその変化の特定分析、また災害等による局地的な生産停止のリスク評価まで進展させたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、グローバル経済を対象として、経済的、環境的に重要な国際貿易を通したサプライチェーン、産業クラスターを抽出するための頑健な統計手法の開発を目指す。さらにそのモデルを用いたより詳細で包括的な分析を進める予定である。具体的には、プロセスデータを反映した資源集約的な産業クラスターの検出、戦略的なリサイクルシステムの構築や製品設計への提案を行う予定である。さらに世界産業連関表を用いた、レアメタルなどの循環(貿易)集約的な国間クラスターの検出、戦略的な資源獲得や国際協定構築への提案に関する研究を積極的に行っていく予定である。
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[Book] "Importance of Considering the Relationship Between Lifestyle and the Environment", in Murray, J., Cawthorne, G, Dey, C. and Andre, C. (eds.), Chapter 13, Enough for All Forever : A Handbook for Learning About Sustainability2012
Author(s)
Shigemi Kagawa, Yuko Oshita. Keisuke Nansai and Sangwon Suh,
Total Pages
419
Publisher
Common Ground Publishing LLC (Illinois)