2011 Fiscal Year Annual Research Report
主張性の4要件理論の確証―トレーニング・プログラムの開発を中心として―
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10J06946
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
松見 麻美 (渡部 麻美) 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会的 / 主張性 / 社会的スキルトレーニング / 主張性トレーニング / 攻撃性 / 青年期 |
Research Abstract |
本研究の目的は次の3点である。第1の目的は4要件相互の関連の様相が実際の対人場面における認知・行動に与える影響を明らかにすること、第2の目的は4要件理論に基づく主張性トレーニングを確立すること、第3の目的は主張性研究領域・社会的スキル研究領域における、主張性の4要件理論の理論的位置づけを明らかにすることである。なお本研究では、主張性を「(1)素直な表現」「(2)情動制御」「(3)他者配慮」「(4)主体性」の4つの要件の視点から捉える。 平成23年度は、第1の目的のための質問紙調査、第2の目的のためのトレーニング・プログラムの修正、第3の目的のための文献研究と質問紙調査、およびこれまでの研究をまとめた論文の執筆と投稿に取り組んだ。 1.大学生94名に対して大学生が考える望ましい自己表現のあり方を検討することを目的とした質問紙調査を行った。その結果、相手の感情や状況に過剰に配慮せず、自らの意志に基づいて率直な自己表現をすることが望ましいと考えられていることが明らかになった。また、回答者自身の達成動機と親和動機及び他者意識についても測定したところ、大学生が考える望ましい自己表現には、自らの納得できることを成し遂げたいという動機と他者の内面に気を配る傾向が影響を及ぼしていた。 2.すでに作成されていた「(3)他者配慮」と「(4)主体性」の内容を含むトレーニングのプログラムを大学生の集団に適用しやすく改編した。 3.(1)主張性と攻撃性との概念上の相違に関する文献を整理したところ、両概念の弁別にあたっては、自己表現行動の背景にある欲求や動機づけの検討、行動の適切性の検討が必要になると考えられた。 (2)大学生386名に対して、主張性の背後に存在すると仮定される相互尊重欲求と自己や適応との関連を明らかにするための質問紙調査を行った。友人の意見や行動に同調しようとする欲求ではなく、自他相互の意見を尊重し合いたいという欲求が、友人関係における適応感や肯定的な自己の捉え方を促進することが明らかになった。 4.これまでに実施した研究を2件の論文として投稿した。一件は、主張性の4要件と攻撃性との間の曲線的な関連を明らかにした論文であり、主張性の4要件を測定する尺度の改訂版を作成し、4要件が攻撃性を介して精神的健康に及ぼす影響を検討した論文であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の目的と第3の目的については、平成22年度から23年度までの研究においておおむね達成できたと考える。しかし、第2の目的である4要件理論に基づく主張性トレーニングの確立には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で達成途上である第2の目的である4要件理論に基づく主張性トレーニングの確立については、トレーニング・プログラムの開発と一部のプログラムの試行がすでに行われている。第2の目的の達成のためには、一連のトレーニング・プログラムをすべて実施し、効果を検証することが必要となる。今後は作成したトレーニングを主に大学生を対象に実施し、トレーニング前後において効果の測定をすることを目指す。
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