2011 Fiscal Year Annual Research Report
思春期・青年期の問題傾向と家族構造および家族内コミュニケーションとの関連性の検討
Project/Area Number |
10J07020
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
板倉 憲政 東北大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 青年 / 父子関係 / 母子関係 / 直接的コミュニケーション / 間接的コミュニケーション / 勢力 / 攻撃性 |
Research Abstract |
これまでの研究において"母子間で父親の事柄に関する否定的な話題を話すこと"は子どもの父親への攻撃行動を助長する可能性が示唆された点から、1)母親から青年に対しての父親の事柄についての情報伝達する場合(以下:直接的コミュニケーション)と父親が自身の事柄についての情報伝達する場合(以下:間接的コミュニケーション)の機能の差異に着目をおこなった。具体的には、場面想定法を用いて、直接的コミュニケーションと間接的コミュニケーションでは、受け手である青年のメッセージの認識にどのような違いがあるか,2)母親から青年に対しての父親の事柄についての情報伝達および父親が自身の事柄についての情報伝達後の青年の認知する父親の勢力や青年の父親に対する攻撃性の変化の差異について検討した。調査協力者は、215名(男性86名,女性129名)の大学生であった。調査結果としては、(1)父親が自身の事柄について情報伝達する直接的コミュニケーションよりも,母親から父親の事柄についての情報伝達する間接的コミュニケーションの方が,メッセージの信頼感が高いことが示された。(2)直接的コミュニケーションよりも,間接的コミュニケーション方がメッセージの拒否感が低いことが示された。(3)青年の認知する父親の参照・専門勢力は,肯定的な間接的コミュニケーションによって高まるのに対して,青年の認知する父親の賞・罰勢力は,直接的なコミュニケーションによって低下する可能性が示唆された。(4)肯定的な情報伝達において父親が自身の事柄について情報伝達する直接的コミュニケーションよりも,母親から父親の事柄についての情報伝達する間接的コミュニケーションの方が,父親への攻撃性が低下することが明らかにされた。以上の知見から,母親が父親の事柄についてどのように伝えているかということが,家族内の父子関係に影響を与える重要な要因であるといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災の影響により,3ヶ月間研究がストップしてしまったため,本来の研究計画に比べてやや遅れているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究はあくまで相関研究や場面想定法を用いた限られた実験手法である。そのため,因果関係の規定が欠如していた。また,これまでの研究は,送り手と受け手のインタラクションが欠如しているという問題が含まれていた。今後の推進方策としては,実際の家族を対象に直接的・間接的コミュニケーションを操作することによる家族関係への影響過程を実験的に明らかにすることが望まれる。
|