2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機デバイスの動作環境下における電子構造と伝導電子の直接観測
Project/Area Number |
10J07037
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
町田 真一 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 微少状態密度 / ギャップ内準位 / 埋もれた界面 / 高感度光電子分光 / 高感度光電子収量分光 |
Research Abstract |
本研究で開発した高感度光電子収量分光/高感度低エネルギー光電子分光複合実験装置を用いて,実際の有機薄膜太陽電池と同様の膜厚構造をもつC_<60>/ルブレン/金界面の電子構造を測定した.ルブレン/金界面について,埋もれた界面の電子状態を一般のHe I励起光電子分光よりも高感度に検出し,金基板のフェルミ準位までルブレン薄膜そのものに由来する微少状態密度が存在していることがわかった,また,C_<60>/ルブレン界面について,実際の太陽電池と同程度の圧膜積層構造における電子構造の観測に成功し,界面形成のごく初期の課程でモルフォロジーの変化が生じることを見出した. 従来の紫外光電子分光では試料帯電の問題から,実デバイスと同様の圧膜積層構造をもつ系は測定そのものが困難であった.従ってモデル界面の電子構造測定にとどまっており,実際のデバイスの電子構造を必ずしも反映していないことが問題となっていた,本研究では,試料から放出される全光電子数を必要最小限に抑えつつ高感度に光電子を検出することで試料帯電を克服し,より現実のデバイスに近い構造の電子状態を高感度で測定する実験装置の開発に成功した.また,1.4-8.0eVの波長可変低エネルギー光源を用いることによってHeIを励起光源に用いた場合に比べて光電子の検出深度を大きくすることができ,埋もれた界面をこれまでよりも高感度に観測できることもわかった. 多くの有機半導体及び有機デバイスにおいて存在すると考えられているエネルギーギャップ内の微少状態密度を実デバイスに則って測定できる本手法の開発は,有機デバイスの動作機構の根本理解につながる重要な成果である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料帯電に強いエネルギー可変低エネルギー紫外光電子分光装置の開発により,従来の紫外光電子分光では測定が容易ではなかった埋もれた界面の電子構造や微少状態密度の実測に成功した.多くの有機半導体材料や有機デバイスで昨今注目を集めているエネルギーギャップ内準位に電子論的にアプローチする手法は実デバイスの動作原理の根本理解に繋がるとものとして順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究により開発した実験装置は,有機デバイスの電子構造解明につながるだけでなく,試料帯電問題が大きな原因となってこれまで測定されてこなかった高分子絶縁体の帯電現象などの新たな研究領域に応用できる可能性をもっており,今後有機物を利用したエレクトロニクス全般の物理現象を電子論的に取扱う際の強力なツールになると考えられる.
|