2011 Fiscal Year Annual Research Report
後藤新平における公衆衛生と権力―植民地を通じた「文明」考
Project/Area Number |
10J07273
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
王 恵楽 早稲田大学, 政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 後藤新平 / 北里柴三郎 / 1894ペスト / 人種概念 / 香港 / 植民地 / 日本 / イギリス |
Research Abstract |
1894年に香港発とされるペスト流行は多くの人口に影響を及んでいた。疫病流行の最中、日本政府が青山胤道と北里柴三郎をはじめとした専門家を派遣した。こうした専門家は、現地の患者(広東出身の中国人、混血のいわゆるユーラシアン、日本人など)、現地の警察や西欧出身の医者と接触することによって重要な言説資料が残されている。本研究は、1894年ペストにおける「人種概念」に焦点をあてて考察を行った。 ペスト流行というどうすることもできない状況が19世紀人類学・医学と出会って、人種の表象に「中国人」や「白人」などの名前を与え、そして、固定する新たな系譜が始まったのである。わかりやすく言うと、同性愛者がエイズの代名詞となってしまったように、中国人がペストの代名詞となった状況に陥った時期があったのである。 同時に、「日本人」としての専門家たちの立場も非常に厄介なものであったことがわかる。特に、人体の解剖を巡る中国人とヨーロッパ医者との緊張関係の中で、日本人の介入が重要な役割を果たした。北里と医者側の言説を整理することによって、「専門家」における人種の表象について分析を行った。 本年度を通じて、筆者は香港、日本、イギリスの専攻研究を総合的に整理し、香港とイギリスの各図書館や資料館で資料採集しに行って来た。各地の研究成果を踏まえた研究蓄積がまだほとんど存在しないため、本研究は文献の整理や各地の研究者との交流によってその空白部分を埋め、さらに後藤新平との繋がりを書き出し、近代アジア史における全体像を織り出すために重要な一歩となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、先行研究を検討し、資料を整理したのである。
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Strategy for Future Research Activity |
採取した資料をまとめ、5月23日の早稲田大学政治学研究科合同指導で発表し、早稲田政治学雑誌に投稿する予定である。
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