2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J07472
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 耕平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ボース粒子系 / 量子固体 / 気体-固体相転移 / 量子性 |
Research Abstract |
この研究は「量子性によって助けられた固体相(局在相)」を探索する目的で行った。量子性の強さを表している量子パラメターを様々に変えながら、強相関ボース粒子系の基底状態における気体-固体相転移を、拡散モンテカルロ法を用いて調べた。拡散モンテカルロ法によるシミュレーションでは、ある体積における固体相、液体(気体)相それぞれの自由エネルギーを計算することができ、その後マクスウェルの規則を用いると固化、融解の転移体積が得られる。初めにレナード・ジョーンズポテンシャルが働くボース粒子系でシミュレーションを行ってみると、かなり大きな量子パラメター領域においても液相が安定であることが分かり、レナード・ジョーンズポテンシャル系では、量子性はボース粒子系の固化を助けなかった。この振る舞いは粒子間相互作用における引力の作用によって引き起こされている可能性があるため、粒子間相互作用で引力項を無くし斥力を強くした量子剛体球系における量子性の効果についても調べた。斥力項の累乗が12乗程度の場合、量子パラメターを大きくしていくと、転移体積が小さくなっていく振る舞いが見られ、大きな量子パラメターでも固体相は安定化しなかった。しかしながら、50乗という大きい場合だと、量子パラメターをいくら大きくして行っても転移体積は、パラメターが小さい領域とほとんど同じであった。このように斥力相互作用のみの場合においても、量子性が固化を助けることは無かったが、シミュレーションで得られたデータを解析すると、量子剛体球系では固化と融解の転移体積が量子パラメターの累乗に比例し、系の自由エネルギーは量子パラメターと体積、そして斥力項の指数によってスケーリングされるということが分かった。以上の結果から、量子剛体球系においても量子性はボース粒子系の固化を助けず、零点振動によって安定化しているような「真に量子的な固体相」は温度ゼロにおいては存在しないという結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有限温度における経路積分モンテカルロ法のプログラムコードの開発を独自でやって来たため、信頼できるコードがなかなか作れず研究が遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
独自でプログラムコードの開発をして来たため、遅れてしまった研究を早く進められるよう、現在は海外の専門家と共同研究を始めた。しかしながら、粒子間の強い相互作用の取り入れ方や、自由エネルギーの的確な計算方法などについて新しい問題が出て来ているが、先行研究を参考に最適な方法を取り入れていく予定である。
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