2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J07472
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 耕平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子固体 / 気体-固体相転移 / 零点振動 / 量子モンテカルロ |
Research Abstract |
本研究は、量子性の強さ(零点振動の大きさ)が固体一気体相転移へどのような影響を及ぼすのかを調べる事を目的としている。前年度までの計算結果から、温度ゼロの基底状態では、どのような相互作用が働く系でも、量子性が強くなると高密度でなければ固化しないということが分かった。そのため今年度は有限温度における計算をおこなうことによって、熱揺らぎと零点振動(量子効果)の競合を調べた。温度ゼロときと同様に、量子パラメターを指標とし経路積分モンテカルロ法を用いて計算をおこなった。粒子間の相互作用としては簡単のために、ベキ乗の斥力相互作用のみを考え、粒子は区別出来るものとした。また量子パラメターvs転移密度の相図を得るために、初期配置としてFCCの完全結晶からシミュレーションを行った。量子パラメターと密度を変えながら、静的構造因子を計算することによって、平衡状態における(準)安定構造が分かり相図を作る事ができる。その結果、温度一定で量子パラメターを大きくしていくと、転移密度は減少していくが、ある量子パラメターの値のところで減少から増加に転じた。つまり、転移密度は量子パラメターに対してリエントラントな振る舞いをしている事が分かった。また温度を下げると、転移密度が減少から増加に転じる量子パラメターの値は小さくなった。量子パラメターの増加に伴い、転移密度が増加する振る舞いは温度ゼロの計算でも見られるが、量子パラメターが小さな領域で転移密度が減少するのは、有限温度特有の振る舞いである。また、この転移密度が減少する領域では、量子効果(零点振動)によって固化しやすくなっており、この領域が量子性によって固体になっている「真に量子的な固体相」であると考えられる。
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