2011 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザRNAポリメラーゼPA-PB1立体構造による抗ウイルス剤の開発
Project/Area Number |
10J07507
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
吉田 尚史 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インフルエンザウイルス / RNAポリメラーゼ / 新規薬剤開発 |
Research Abstract |
インフルエンザは、毎年冬季に流行する人間にとって身近な感染症である。しかし、2009年4月にメキシコで発生した新型インフルエンザは瞬く間に広がり、世界保険機関(WHO)による警報フェーズも6に引き上げられるなど世界中で脅威となった。幸い、新型インフルエンザは弱毒性であり、またタミフルが有効であったことから死亡率はそれほど高くなかった。しかし近年、東南アジア諸国で家畜として飼われている豚の多くが強毒性トリインフルエンザを保持していることが確認されており、高病原性新型インフルエンザのヒトへの感染は時間の問題とされている。これに対し、世界中でタミフルの備蓄やワクチンの開発が行われているものの、実際に高病原性新型インフルエンザが発生した際のそれらの有効性は不透明であり、違った形での対策が世界中で求められている。 インフルエンザウイルスが保有するRNAポリメラーゼは、ウイルスの増殖に中心的な役割を担っているため、その阻害剤は抗インフルエンザ薬として非常に高い有効性を示すことが予想されている。また、これまでの薬剤ターゲットとは異なり、極端に変異が起こりにくいという特徴をもっているため、トリインフルエンザを含めどのタイプのインフルエンザが新型インフルエンザに変貌を遂げるのか予想が難しい中、理想的な薬剤ターゲットと注目されている。インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼはPA、PB1、PB2と呼ばれる3つのサブユニットで構成されており、3つの複合体の形成なしでは効果的に働くことができない。そこで、申請者らはRNAポリメラーゼのサブユニット間結合阻害剤が新規抗インフルエンザ薬として非常に強い候補であると考え、PA-PB1サブユニット間結合部位構造を解析した。本研究では、その立体構造を基にPA-PB1サブユニット間結合阻害剤の探索と設計を行った。具体的には、まずin-silicoスクリーニングを行い、続いて溶液中でタンパク質レベルでの結合阻害作用の有無を調べた。その結果、2種類の化合物についてPA-PB1結合阻害作用が認められ、それら化合物を用いて細胞レベルでウイルスの増殖を抑制するかを調べた。しかし、2種類の化合物ともに細胞毒性があり薬剤として不適であったため、これら2種類の化合物を基に、再度in-silicoスクリーニングを行い、阻害剤を設計し、溶液中及び細胞内での化合物の効果を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブユニット間結合阻害剤の候補であった2種類の化合物ともに細胞毒性が確認されたものの、再度in-silicoスクリーニングを行うことで、細胞毒性のない、さらにはウイルスの増殖を抑える阻害剤の設計に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルス増殖の抑制が認められている数種類の化合物についてタンパク質とのX線結晶構造解析を行い、化合物とタンパク質との結合様式を明らかにする。
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