2012 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザRNAポリメラーゼ PA-PB1立体構造による抗ウイルス剤の開発
Project/Area Number |
10J07507
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
吉田 尚史 横浜市立大学, 生命ナノシステム学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インフルエンザウイルス / RNAポリメラーゼ / 新規薬剤開発 |
Research Abstract |
本研究はインフルエンザウイルスに対する新規薬剤開発を目指し、ウイルス増殖の中心的役割を果たしているインフルエンザRNAポリメラーゼのPA-PB1サブユニットに対して、結合阻害剤のスクリーニングを行ってきた。研究計画通り、(1)コンピューターレベル(2)タンパク質レベル(3)細胞レベルの3段階に分けて研究を進めてきた。まずRNAポリメラーゼPA-PB1の立体構造を基にin-silicoスクリーニングを行い、数千種類の化合物を阻害剤の候補として算出した。次に、これらの化合物が実際にタンパク質間相互作用を阻害するか溶液中で調べたところ、数種類の化合物について阻害効果が認められた。また、PAタンパク質と化合物との解離定数をITCによって算出した。さらに、これらの化合物のうち数個は、細胞毒性がなくウイルス増殖に対して抑制効果をもつことを確認した。これらの結果を踏まえ平成24年度では主に、X線結晶構造解析法によるPAタンパク質と化合物との結合様式の解明を目的とし、研究を行った。複合体構造の解析には、PA単体の結晶に化合物を浸漬し結合させる方法と、PAと化合物を混合し、結晶化する方法の2通りが考えられた。そこで結晶化前に、PA単体と化合物との複合体それぞれについて、超遠心分析を行った。その結果、PA単体と化合物複合体ではピークの変化が観測されたことから、化合物が結合することにより分子の構造が大きく変化することが示唆された。すなわち、化合物を浸漬する方法では、化合物の結合に伴い分子構造が変化してしまい、結晶が壊れてしまう可能性があり、この方法は不適であると考えられた。そのため、PAと化合物をモル比1:1で混合し、共結晶化を行ったが、構造解析に適した結晶を得ることはできなかった。次に、タンパク質の結晶化を促進させるために、抗体を用いて再度結晶化を行った。まず、PAタンパク質を抗原として、抗体の作製を行い、得られた抗体をPA-化合物複合体に結合させ、3者複合体として共結晶化を行った。その結果、いくつかの条件で結晶が得られ、放射光施設、高エネルギー加速器研究機構においてX線回折実験を行ったところ、最高8A付近までの反射を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PAサブユニットと阻害剤の結合様式の解析には至っていないものの、細胞毒性がなくウイルス増殖に抑制効果をもとう化合物を見いだすことができた。これらの化合物は新規抗インフルエンザ薬の開発につながることが十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルス増殖に対して抑制効果が認められている化合物について、PAタンパク質とのX線結晶構造解析を行い、化合物とタンパク質との結合様式を明らかにする。その複合体の結合様式から、より特異的に強く結合する化合物の設計につながることが期待される。
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