2011 Fiscal Year Annual Research Report
聖地におけるスピリチュアルな体験と癒しの人類学的研究―現代のイギリスを事例に
Project/Area Number |
10J07515
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
河西 瑛里子 国立民族学博物館, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピリチュアリティ / グラストンベリー / 英国 / 女神運動 / 医療 / ニューエイジ / ヨーロッパ人類学 / 癒し |
Research Abstract |
本研究は、1)ある個人のスピリチュアルな危機からの回復を、聖地という特定の場所に焦点をあて、その場所とのかかわり方と癒しの関係について、宗教的視点だけではなく、医療的視点も取り入れて分析する、2)現代の聖地における新しい癒しのあり方について考察し、メディカル・ツーリズムという視点も取り入れて、具体的な提言をおこなうことを目的としている。本年度は以下のような活動を実施した。 1、研究成果の発表 2010年度までの現地調査の成果をもとに、本年度は日本文化人類学会や「宗教と社会」学会、国立民族学博物館や京都大学の研空会で合計10回の発表をおこなった。また、2012年刊行予定の世界宗教学事典にも執筆をおこなった。現在、フィールドワークに基づいた論文を執筆していて、国立民族学博物館の紀要、京都大学人文科学研究所の紀要、『文化人類学』などに投稿する予定である。 2、宗教とツーリズム研究会での発表(科学研究費補助金使用) 3の調査に先立ち、昨年度までの調査で得られていた地元民と移住者の関係をまとめて、発表をおこなった。その後、宗教と観光に関する知見を深め、研究者と交流するため、継続して参加した。 3、英国グラストンベリーでのフィールドワーク(科学研究費補助金使用) 2011年9月:2005年から継続的に実施している、イギリスのグラストンベリーにて、フィールドワークをおこなった。昨年度は、癒しに携わる移住者を対象にしていたが、今年度の調査では、彼らを受け入れることになった、グラストンベリーの地元住民にインタビューをおこなった。また、サマーセット州立田園生活博物館所蔵の、1980-90年代に地元の高齢者に行われたインタビュー資料の調査もおこなった。 4、「トラウマ経験と記憶の組織化をめぐる領域横断的研究」研究会への参加(科学研究費補助金使用) 辛い体験とそこからの回復について、知見を深め、情報収集ならびに調査をおこなっため、参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に実施した長期調査で得られたデータをもとに、研究結果を取りまとめた論文を執筆することと、学会や研究会で研究成果を発表することを目的としていた。論文については、現在、『国立民族学博物館研究報告』への投稿論文を執筆中である。発表については、海外での発表も含め、当初の予定を上回る11回の発表をおこなった。以上の二点から、上記のような評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、複数のスピリュアリティのグループを取り上げる予定だった。しかし、議論の焦点を絞るため、今年度は女神運動に着目して、研究を進める。欧米の現代の女神運動とは、フェミニズムと、キリスト教到来以前のヨーロッパにあったとされる信仰の復興運動ネオペイガニズムが、融合した運動である。女神運動に携わる人々の多くは、本研究で対象としてきたスピリチュアルな危機に遭遇し、この運動を通して回復したという経験をもつ。そこで、まず女神運動の研究書や実践者の出版物などの文献調査をおこなう。続いて、長期調査で得られたデータを用いながら、『文化人類学』、『国立民族学博物館研究報告』、『人文学報』、『宗教と社会』などの雑誌への投稿を目指す。
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Research Products
(15 results)