2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間相互作用ネットワークによる維管束形成の制御機構
Project/Area Number |
10J07543
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 侑貴 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 維管束形成 / ペプチドホルモン / 植物ホルモン / 細胞分化 / クロストーク / シグナル伝達 / 幹細胞 |
Research Abstract |
維管束形成の制御に関して、オーキシンやサイトカイニン、ブラシノステロイドといった植物ホルモンの重要性が明らかとなってきている。また近年では、低分子のペプチドホルモンであるCLEペプチドが維管束形成過程における細胞間相互作用を担うことが報告されているが、今のところその詳細な分子メカニズムは不明な点が多い。そこで本研究では、CLEペプチドを中心として、植物ホルモンをはじめとする他の細胞間シグナル分子との関係性を明らかにすることで、維管束形成を支配する制御ネットワークの統合的な理解を目指している。 本年度は特に、維管束幹細胞の分化制御機構を明らかにするため、TDIF/TDRシグナルに着目をし、シグナル伝達機構の解明を目指した。まず、TDIF(CLE41/44)の受容体であるTDRの細胞内キナーゼドメインを用いた酵母ツーハイブリットスクリーニングにより、TDRと特異的に相互作用する因子としてTIK(TDR-Interacting-Kinases)を単離した。分子間相互作用の解析から、TIKは細胞膜近傍でTDRと相互作用すること、更には、遺伝学的アプローチからTDIF/TDRシグナルを仲介することを明らかにした(植物生理学会2012発表)。次に、TIKの活性が維管束幹細胞の分化に与える影響を考察するため、TIKの阻害剤を取り寄せ、生理学的解析をおこなった。興味深いことに、TIKの阻害剤を植物ホルモン処理条件下のシロイヌナズナ葉に投与すると、ほぼすべての細胞が維管束幹細胞を経て、最終的に木部細胞へと分化した。これらの結果は、TIKがTDIF/TDR依存的な維管束幹細胞の維持に重要であることを示唆している。このTIKの阻害剤を用いた新たな維管束分化系は、遺伝子操作の容易なシロイヌナズナを用いて、形質転換することなく維管束の細胞を分化誘導できるので、維管束形成に関わる因子群を単離する上で有効な手段になることが期待される(植物学会2011発表)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TDIF/TDRのシグナル伝達機構の解析に関しては、当初の計画通り順調に進展している。細かい部分での、TDIF/TDRによるTIKの制御機構に関しては、現在生化学的アプローチからも解析を進めているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
維管束幹細胞の維持がTDIF/TDRの経路だけではなく、複数のシグナル経路で厳密に制御されていることが予想されるので、TIKが他にどのような因子によって制御されているかを調べ、複雑な制御ネットワークに迫る。更に、TIKと木部分化のマスター因子VNDとの関係を明らかにすることで、維管束幹細胞の維持におけるTDIF/TDRのシグナリングカスケードの全容解明に迫っていく。
|
Research Products
(4 results)