2011 Fiscal Year Annual Research Report
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10J07549
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
服部 亜由未 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニシン漁 / 漁業史 / 近代 / 北海道 / 出稼ぎ / 漁家経営 / 歴史地理学 |
Research Abstract |
本年度の研究計画に基づき、以下のように研究活動を実施した。 1.出稼ぎ者出身地域の新聞(『秋田魁新報』国会図書館所蔵、マイクロフィルム版)とニシン漁獲地域の新聞(『小樽新聞』小樽市立図書館・北海道立図書館所蔵、マイクロフィルム版)の記事を収集した。本年度は昭和初期を中心に、『秋田魁新報』からは、ニシン漁業の漁況や出稼ぎ状況、ニシン漁業に対する考え方を、『小樽新聞』からは、ニシン皆無時にいかなる報道がなされたかを検討することで、両側面から重層的に昭和初期のニシン漁業を論じることが可能となった。 2.大正・昭和初期における漁獲状況や活動内容について、より詳細に把握するために、水産試験場各支部による「漁況報告」(1923~1938年、余市水産博物館所蔵)のうち、余市・小樽・浜益・増毛分を撮影・整理した。本資料は、北海道水産試験場による各町村のニシン漁獲量統計資料よりも詳細に、各集落、時には漁家単位の漁獲量、投網・揚網実施状況等について、ニシン漁業期間中ほぼ毎日記載されている。天候や漁獲量に応じた漁業活動を知ることができる貴重な資料であり、今後、他地域についても順次整理する。 3.ニシン漁家経営の衰退にともなう変容に関して、『人文地理』に掲載された中規模ニシン漁家の事例と比較し、より一般性を高めるために、本年度は大規模ニシン漁家青山家の事例について、史料調査(北海道開拓記念館所蔵・青山家資料)に加え、現地調査(北海道浦河町、雄冬、大分県津久見市)を行ない、青山家の漁場位置等を特定した、その成果を「日本地理学会2012年春季学術大会」にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた青山家資料の調査に加えて、「漁況報告」、「漁事日記」等の関係資料や当時の新聞記事を収集・整理することができた。一方で、現地調査をできる限り行ない、聞取り調査も前年度に引き続き進めていった。以上のように、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に変更はない。平成24年度が最終年度であるため、得られた資料やデータを整理・分析し、ニシン漁業従事者(主に経営者や労働者)の展開を具体的事例に沿って検討し、近代の北海道ニシン漁業における労働力の集積過程について解明する。
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