2011 Fiscal Year Annual Research Report
硬X線撮像分光による天の川銀河の高エネルギー活動性の統一的解明
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10J07550
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内山 秀樹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 天文学 / X線 / 「すざく」衛星 / 天の川銀河 / 銀河中心領域 / 宇宙線 / CCD |
Research Abstract |
本年度は、次に述べる3点について主に成果があった。「すざく」の鉄輝線帯域で良質なX線データを用い、熱的(1)・非熱的(2)の両面で天の川銀河の高エネルギー活動性について新たな知見を得た。また、「すざく」搭載X線CCDカメラの機上較正を行い(3)、銀河内の極めて明るい天体の観測を可能にした。これらの結果はいずれも学術論文として査読付雑誌に受理されている。 (1)昨年度より解析を進めていた、「すざく」X線アーカイブデータを用いた天の川銀河中心領域の高階電離鉄輝線の研究を投稿論文にまとめた。「すざく」により得られた高階電離鉄輝練強度と近赤外線観測に基づく星質量の空間分布の比較の結果、星質量当たりの高階電離鉄輝線放射率が、銀河面に比べ中心領域で4~20倍大きいことを明らかにした。これは、未だ正体不明の高階電離鉄輝線の起源が、天の川銀河の場所毎に異なる可能性を強く示唆する。 (2)「すざく」のデータに基づき、天の川銀河中心領域の中性鉄輝線の起源を宇宙線陽子と巨大分子雲の相互作用で説明するモデルを提唱した。これにより、従来、光電離と宇宙線電子のみが主に議論されてきた中で、中性鉄輝線の大きな等価幅を説明する新たな視点を示した。 (3)「すざく」搭載X線CCDカメラで明るい天体の観測時に起きるパイルアップ現象に対処するデータ処理法を整備した。これにより、銀河系内のブラックホール連星などの高エネルギー天体において、「すざく」データ解析のより効率的な可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線天文学黎明以来の謎であった高階電離イオン輝線、特に鉄輝線について、銀河中心領域と銀河面では、性質の異なる少なくとも2成分が必要であることの強い証拠を得た。これは、目的とする高階電離イオン輝線放射の起源解明に対し、「すざく」を用いた私の研究以前からの明らかな前進であるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は銀河中心領域に加えて、天の川銀河全体での輝線強度の分布の解析を進める。特に、これまで余り研究されて来なかったカルシウム、アルゴン、硫黄といった元素の輝線に着目し、空間分布のみならず、温度範囲においても、天の川の熱的放射成分が多成分を持つかどうかを検証する。これらについては既に予備的な解析を初めており、結果を得つつある。
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Research Products
(9 results)