2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における社会的格差の世代間関係の解明―貧困の再生産に着目して
Project/Area Number |
10J07746
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相澤 真一 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 貧困 / 社会調査 / データ入力 / 計量分析 / 社会階層 / 戦後日本 / 戦争の影響 / 生活水準 |
Research Abstract |
本研究は、現代日本の貧困問題の解決に寄与するために、貧困の世代間再生産関係の解明を行ってきた。この目的を達成するために、本研究では、(1)過去の貧困調査データ(1961年に実施された「神奈川県における民生基礎調査」と1953年に実施された「貧困層の形成(静岡)調査」)の復元・分析、(2)国際比較による計量分析、(3)現代日本における貧困地域の社会調査の実施、の3つを任期中に行う予定であり、特に(1)と(2)に焦点を当てた研究を実施してきた。 (1)については、1961年の「神奈川県における民生基礎調査」のデータの復元を昨年度に引き続いて行った。昨年度に完了した5自治体(川崎市、横須賀市、三浦市、逗子市、大和市)2,925票分(1票あたりの入力カラム数は350)に加え、「神奈川県における民生基礎調査」の全体の4分の1以上を占める横浜市の3227票分の入力作業を平成23年5月までに完了した。2年度分で、合計6152票分のデータを作成した。 さらに、静岡県で1952年に行われた「貧困層の形成調査」、ちょうど1000票(1票あたりの入力カラム数は550)のデータ入力を学生の補助を得て、平成23年6月に行い、さらにアフターコーディングの作業を平成23年9月に完了した。 社会調査資料の復元にめどがついたことにより、平成23年夏以降は、海外渡航を重ねながら、分析の深化にも努めた。秋から渡航したイギリス・オックスフォード大学では、現地研究者の示唆を得ながらデータクリーニングを行った。加えて、社会調査発祥の地であるイギリスでの資料収集も行った。 以上の作業を通じて、戦後日本の貧困が戦前の階層的地位と戦災あるいは家族の戦死の複合的要因によって生じていること、また、貧困によってもたらされる生活水準の同時代の標準世帯に比べて相当に低かったことが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した「1961年の神奈川県における民生基礎調査」のデータ作成については、神奈川県の東半分の入力が終わり、高度経済成長前期の趨勢を解明するめどをづけたこと、また貧困層形成過程のわかる「貧困層の形成調査」の入力も完了し、これらの成果を発表するめどもつけたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として重要なことは、今回、復元した貧困調査のデータを用いた研究成果を、一つでも多く発表し、多くの人に広めていく必要がある。またそのような研究成果を問うていく中で、入力してきたデータのデータクリーニングをさらに進め、現在、日本で広まりつつあるデータアーカイブに寄託できる水準にまで高める必要がある。これらの作業を進めるために、さらにいくつかの形で、人的・物的資源を投下する必要がある。
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