2011 Fiscal Year Annual Research Report
サイクロトロン共鳴を用いた強磁場中性子星におけるプラズマ物理学の研究
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10J07795
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
岩切 渉 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中性子星連星 / サイクロトロン共鳴 / X線偏光計 |
Research Abstract |
当該年度における研究の大きな成果は、X線天文衛星すざくによる中性子星連星4U 1626-67の観測論文が、世界の天文学系雑誌で最もcitation数の多いアメリカのAstrophysical Journalに受理されたことである。この論文の焦点は、中性子星が持つ1億テスラの磁場によって、サイクロトロン共鳴による吸収線が硬X線帯域にできることは以前から知られていたが、この吸収線が中性子星の自転によるパルスの一番暗いフェーズでは輝線に変わるという新たな現象を発見したことである。昨年9月にAstrophysical Journalに投稿した際には、レフェリーからこの輝線は示されている有意度の検定方法が間違っているのでは無いと反論を受けたが、およそ半年間、数回に渡る議論のやりとりでレフェリーに輝線が統計的に有意であることを納得していただき、受理に至った。この結果は、連続成分の明るさに対する変化と合わせて、30年前に提唱された理論予想と一致するものであり、強磁場中でのプラズマ物理に対して非常にインパクトのあるものである。 また、実験の面ではNASAと共同開発を行っているX線偏光計に川いられる電子増幅装置GEMの、実際に衛星搭載品で川いられるジメチルエーテルガス中での両極板読み出しの実験、及びジメチルエーテル中での屯子増幅度や放電特性を調べる実験を行い、共著者として物理学会やMPGI)(Micro Pattern Gas Detector)研究会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子星連星4U 1626-67のX線天文衛星すざくによる観測結果についての投稿論文が、論文雑誌に受理されたことが、この評価を点けた大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次の2点に対して焦点をあて、研究を進めていく。 1つ目は、中性子星連星磁極における強磁場中のプラズマ放射の自転周期依存性に対して、実際にシミュレーションを行うことによってよりプラズマの密度などに対してより定量的な値を調べ、論文としてまとめていくことである。2つ目は、より詳細な強磁場中プラズマ放射の輻射輸送過程を探るためには、未だその難しさの為に達成されていないX線偏光の観測を実現することが重要である。そのために、NASAのXACTロケット実験に搭載される新型X線偏光計の開発を行う。
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