2010 Fiscal Year Annual Research Report
相反する統語的振舞いに見られる語彙的・語用論的認可条件
Project/Area Number |
10J07980
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小薬 哲哉 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 動作表現構文の他動性 / 譲渡不可能所有と提示機能の相関関係 / 日英語の身体行為構文の受動化 / Parallel Architecture Theory / 方向を表すinの生起条件 |
Research Abstract |
本年度は、英語に観察される相反する2つの統語的振舞いの語彙的・語用論的な条件について、研究計画に従い、次の4点を中心に研究を行った。(1)「Reaction Object構文」改め「動作表現構文(Gesture Expression Constructions ;例: Mary smiled her thanks)」のこれまでの記述研究の総括、及び本構文の受動化が示す理論的含意の考察、(2)英語の同族目的語構文(例:Smiles were smiled)、及び日英語の身体行為構文の受動化(例:Hands were waved/観客から手が振られた)と(1)との関連性についての研究、(3)相反する2つの統語的振舞いを説明するための枠組みに関する理論研究(4)方向を表すinの生起条件に関する意味・語用論的観点からの記述研究。(1)と(2)により、「(譲渡不可能所有という)構文の意味特性と(提示文としての)談話機能との関わり」が2つの振舞いの原因であることが判明した。これは、計画目標[A]「各構文の記述的一般化の提示」と[B]「一般化の妥当性の検証・共通点の考察」に対する成果となる。加えて英語から抽出された一般化が日本語の身体行為構文にも当てはまることが分かり、提示した分析が複数の言語間で成立することを突き止めた。他の「発話様態動詞のthat節補文の振舞い」と「不定目的語省略(※軽動詞構文から変更)」についてもデータ収集と分析を進め、共通した一般化を提示し[A][B]を達成する見込みがある。また、(3)について、Jackendoff (2002), Culicover and Jackendoff (2005)のParallel Architecture理論を修正・拡大し、4つの現象を包括的に捉えるための理論的基盤を構築する作業を行っている。これにより、[A][B]よりも上位の目標である[C]「抽出された一般化に対する原理立てられた説明」に関しても成果が期待できる。また、共同研究の一環として(4)を行い、方向を表すinの振舞いにも語彙・語用論的な性質が深く関わることが明らかとなった。
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