2010 Fiscal Year Annual Research Report
赤外レーザー分光と量子化学計算による生体分子高次クラスターの微細構造決定
Project/Area Number |
10J08000
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浅見 祐也 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 核酸塩基 / 孤立気相分光 / 赤外振動スペクトル / 量子化学計算 / ヌクレオチド / 高次クラスター / 非調和振動計算 / 微細構造 |
Research Abstract |
生物が多様な進化の中から作り上げてきたRNAやDNAヌクレオチドは、遺伝情報として利用されるだけでなく、生体内の生理作用や情報伝達といった重要な役割を担っている。このような生体分子はX線結晶回折やNMRの測定によって構造の知見を得ることが可能だが、この手法では周囲に存在する分子の影響を受けるため、単量体本来の構造を知ることができない。そのため、我々は生体分子の正しい性質を知るため、孤立気相のレベルでの赤外振動分光法を用いて、その微細構造を明らかにしてきた。 平成22年度の研究で、化学修飾法を用いることにより、ヌクレオチド単量体を完全非破壊的に気化し、その安定構造の決定に成功した。この成果を論文として公表し、初年度としては十分な成果が得られた。しかし、最終目標としていた高次クラスターの観測およびその構造決定には至らなかった。そこで、レーザー脱離法の条件を再度検討すべく予算を繰越し、より高効率なクラスター生成の手法を構築することにした。 この結果、2',3'-O-イソプロピリデンアデノシンという別塩基のヌクレオシドで測定を行った結果、十量体までの極めて巨大なクラスター生成を確認した。このことは、現状のレーザー脱離装置に高次クラスターを生成する能力が十分備わっていることを示している。そのため、ヌクレオチド単量体レベルで大きなクラスター生成が起こらない理由は、鎖状構造の無いため、高次構造の形成に適した安定構造を持たないことに由来すると考えられる。 また本年度の研究では、高次クラスター構造を決定するための理論的手法の開発にも着手する予定であった。この点はアデノシン二量体の赤外振動スペクトルの測定と、その非調和計算を行うことで達成できた。特にこの二量体は64原子と分子サイズが極めて大きいが、実験の帰属に効果的な非調和項のみを選択的に取り入れ、且つ高い電子状態近似を用いることで、定量性の飛躍的な向上に成功した。
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Research Products
(9 results)