2010 Fiscal Year Annual Research Report
思春期・青年期の性的少数者と自殺予防:学校における自己構築を支えるモデルの構築
Project/Area Number |
10J08150
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荘島 幸子 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所精神保健計画研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 性的少数者 / 自殺予防 / 学校教育 / フィールドワーク |
Research Abstract |
今年度(2010年4月~2010年10月末)は【研究1】性的少数者の経験と対処方略、【研究2】教師および養護教諭の当事者に対する対応の2つの研究に関してフィールド開拓を行いながら、性的少数者当事者への聞き取りと、教師・養護教諭への聞き取りおよび質問紙調査を行った。 1.【研究1】:2010年4月より、都市部および地方でのフィールド開拓(自助グループの開催および参加、当事者が集るイベントへの参加)を行い、数名への聴き取りが可能になった。今後もフィールド開拓および聞き取りを継続し、質量ともに豊かなデータを収集する。 2.【研究2】:2010年4月に、高等学校および中等学校に在籍する学校教員および行政職に携わる元教員を対象に、<学校における性的少数者の生徒および対応に関するアンケート>を郵送で配布した。対象は、関東圏の高校および総合教育センター(各1機関)、近畿圏の高等学校、中学校および総合教育センター(各1機関)、中国圏の中学校(1校)で、教員経験のある者を対象とした。有効回答は全機関からの回答あわせて180名であった。アンケートでは、性的少数者とのかかわりの経験、性教育の賛否、(性の問題を含めた)授業で扱いにくいテーマと理由、性的少数者とかかわりをもったときの気持ち、校内における自殺予防の取り組みへの態度について尋ねた。さらに、元中学校教員(元管理職)2名を対象に性的少数者に対する教員の意識と学校の対応、および学校やクラスで性的少数者に関する授業をすることについて2時間程度のヒアリングを行った。 3.本研究の意義:これまで学校空間において性的少数者は不可視的な存在とされていたために、我が国の学校現場における性的少数者と彼らを取り巻く教師・養護教諭の対応や構えについて聞き取りを行って検討した研究は皆無である。そのため、学校現場に特化した実証的な知見は積み重ねられていないのが現状である。本研究では、性的少数者の学校経験について聞き取りを行うだけでなく、教師・養護教諭・学生といった異なる立場の者が性的少数者と関わるなかでの経験や当事者への態度・構えおよびその変化について着目する。聞き取りと質問紙調査を行うことで実証的に検討する点が独創的であり、将来的な研究の積み上げの第一歩となると思われる。
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