2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J08213
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
尾崎 友厚 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 誘電体 / 非鉛誘電体 / 透過型電子顕微鏡 / 磁性誘電体 |
Research Abstract |
本研究では、ナノスケールでの相分離構造(多重秩序構造)を制御することにより、マルチフェロイック物質がもつ磁気誘電相関現象とリラクサー誘電体がもつ優れた誘電特性を融合させ、新たな非鉛系機能性材料を創製することを目的としている。今年度は非鉛系機能性材料として強誘電体BiFeO3(BFO)に着目し、誘電特性や圧電特性などの物理的特性の評価とともに透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた微細構造解析を行うことで、圧電特性向上の機構を求める研究を行った。以下に研究成果を示す。 ・(1-x)BiFeO_3-xSrTiO_3系においては共同研究先である東大先端研宮山研において電界誘起歪み測定を行い、良好な圧電特性を示す組成の探索を行った。さらに、組成x=0.3, 0.4について良好な圧電特性を示す起源を探るため、TEMによる微細構造解析を行った。その結果、相境界近傍組成において強誘電ドメインの分極方向の回転が観察され、圧電特性を向上させる起因の一つとして提案されている分極回転モデルを裏付ける結果が得られた。 ・BiFeO_3-BaTiO_3-Bi(Mg_<0.5>Ti_<0.5>)O3_系(BT-BMT-BFO)について山梨大学和田研究室との共同研究を開始した。BT-BMT-BFO系はドメイン壁密度を制御することによって圧電特性の向上を目指すナノドメインエンジニアリングが提案されている材料である。BT-BMT-BFO系について電子線回折法を用いた結晶構造解析を行った結果、巨大な圧電応答を示す組成において局所的な格子歪みを持つことを示す散漫散乱が観察され、一方、同じ組成領域での微細構造観察ではナノスケールでの二相共存状態を示すtweedパターンが観察された。これらの結果は、結晶粒内に分極ナノドメインが存在することを示し、分極ナノドメインがBT-BMT-BFO系の圧電特性について重要な役割を果たしていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記述したように(1-x)BiFeO_3-xSrTiO_3系の研究において相境界での分極方向の回転を実空間観察で捉えることに成功した。これは圧電材料の圧電特性向上の機構についての手がかりとなる重要な成果であり、交付申請書にも記載したモルフォトロピック相境界(MPB)組成の決定という目標よりもさらに一歩進展した成果だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で、BiFeO3系強誘電体の相境界での結晶構造・微細構造の変化と圧電特性の相関については概ね明らかにすることができた。今後の研究の推進方策としては、これまでに得られた実験結果から圧電特性向上の機構を提案し、その機構に基づいて高い圧電特性を有する非鉛系圧電材料の作製を試みる。また、相境界で現れる強誘電性に関係したドメイン構造の制御を試み、透過型電子顕微を用いて磁場印加、電場印加下でのその場観察を行うことで、誘電ドメインと誘電ドメインに付随した磁気ドメインの動的挙動を観察し、ドメイン間の相互作用やダイナミクスを明らかにする研究を行う。
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