2010 Fiscal Year Annual Research Report
監視社会における移住者の管理と主体性をめぐる社会学的研究
Project/Area Number |
10J08226
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
稲津 秀樹 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グローバリゼーション / 移民 / エスニシティ / 監視の経験 / 空間の管理者 / フィールドワーク / 多文化共生 / ラテンアメリカ出身者 |
Research Abstract |
本年度の代表的な研究成果として、阪神間のラテンアメリカ出身者とその支援者たちへの聞き取り調査と、地域日本語教室における参与観察を精力的に進め、その主要部分を論文「日系ペルー人の『監視の経験』のリアリティー<転移>する空間の管理者に着目して」(『社会学評論』第61号、第1巻、2010.06)にまとめたことが挙げられる。同論文では、阪神間地域のペルー出身者たちが生活の中で経験する「生きづらさ」としての「監視の経験」について、ガッサン・ハージによる「空間の管理者」概念を援用しつつ記述することにより、既存研究にない理論的知見を見出した。また、関西学院大学大学院社会学研究科大学院GPプログラムのバックアップも受け、都市空間における監視権力の展開と抵抗の場をめぐる事例集積とそれらの比較研究を、随時フィールドワークを行いながらすすめた。その成果の一部は『KG/GP社会学批評別冊共同研究成果論集』(発行:関西学院大学社会学研究科大学院GP、2011.03)に共編報告書として編集/発表した論考等にまとめた(山北輝裕・谷村要・吹上裕樹との共編)。 口頭発表においては第83回『日本社会学会』(於名古屋大学、2010.11)若手企画テーマ部会「グローバリゼーションと移動/定住のフロンティアの現在」の参加を通じて報告を行い、討論記録は後に、『KG/GP社会学批評』(発行:同上、第4号、2011.02)の特集として公表した。アウトリーチ活動の一環としても『多言語・多文化社会研究全国フォーラム』へと出席し報告を行った(於東京外国語大学、2010.11)。更にNHKアーカイブストライアル研究(第1期)へも加わることで、上記の成果をNHKの移民をめぐるメディアコンテンツを利用した表象分析と架橋しつつ考察していく機会も得た。 以上に留まらず、『関西学院大学先端社会研究所紀要』『KG/GP社会学批評』を中心に、査読付論文、コラム、査読なし論文、査読なし英語論文を多数発表した。これらの実績によって特別研究員申請時の研究目的・内容に記した基本目標は、予定通りに達成した。次年度以降への課題としては、継続的なフィールドワークの実施により、上の成果を更に深めていくと同時に、アウトリーチ活動をふくめた社会的還元も進めること、ひいてはそれらの延長線上に博士論文の執筆/提出を行うことが挙げられる。
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