2011 Fiscal Year Annual Research Report
監視社会における移住者の管理と主体性をめぐる社会学的研究
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10J08226
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
稲津 秀樹 関西学院大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | グローバリゼーション / 移民 / 監視 / ナショナリズム / エスニシティ / 多文化共生 / アイデンティティ・ポリティクス / ラテンアメリカ |
Research Abstract |
昨年度の研究実績によって、本研究の基本目標は、ほぼ予定通りに達成された。最終年度となる本年度は、フィールドワークの実施により移住者と監視をめぐる社会学的研究を更に深めていくと同時に、学会のみならず、アウトリーチ活動をふくめた社会的還元も進めること、ひいてはそれらの延長線上に博士論文の執筆を開始する旨を設定していた。 まず、継続的なフィールドワークの代表的な成果としては、阪神間のラテンアメリカ出身者と日本語教室等支援者たちへの聞き取り調査に加え、「多文化共生」イベントにおける参与観察を精力的に進めた。その主要部分は、共著所収の論文「『多文化共生イベント』におけるアイデンティティ・ポリティクスの現在-『マダン(〓〓)』の変容にみる<ナショナルなまなざし>の反転可能性」として発表した(岩崎稔・陳光興・吉見俊哉編、2011『カルチュラル・スタディーズで読み解くアジア』せりか書房)。また、神戸市のある地区において集住する移民/エスニシティをめぐる歴史的重層性の一端を報告書に編纂する作業に携わった。また、ラテンアメリカ地域の送り出し国(ペルー)へのフィールドワークを実施した。報告等の代表的なものとしては、犯罪学/犯罪社会学の国際学会である『The 16^<th> World Congress of the International Society for Criminology』(於神戸国際会議場、2011.08)にて、これまでの研究成果を英語でとりまとめ、海外の研究者に向けた報告を行った。アウトリーチ活動の一環としても『第11回多民族共生人権研究集会』に招待講演者として出席し、市民/企業セクターにむけた研究成果の還元を行った(於大阪府立男女共同参画青少年センター、2011.11)。 以上の実績を踏まえ、関西学院大学大学院社会学研究科に、博士学位キャンディデートを申請し、受理された(2011.12)。今後の課題としては、本研究の成果を博士論文に集約させることがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究目標として研究申請書に記した範囲での、(1)都市空間における移民への監視をめぐる事例研究の集積と比較研究(2)監視社会における移民の管理と主体性を把握するための理論的枠組みの提出については、特別研究員採用中に達成された。「おおむね順調に進展」したと判断した理由は、博士論文のキャンディデート獲得という特別研究員申請書に記した目標までは達成したものの、特別研究員期間内での提出/受理にまで至れなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題としては、本研究課題を「移民と監視をめぐる社会学(仮)」とした博士論文に集約させていくことが挙げられる。その後、特別研究員採用期間中に渡航したペルーをはじめ南米への本格的なフィールドワークを実施していくことで、一地域レベルではなく、国を跨いだリージョナルなレベルで「移住者の管理と主体性」をめぐる研究をすすめていくことを予定している。
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