2011 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性規則合金の磁性制御と偏極可変スピン源への展開
Project/Area Number |
10J08370
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 一平 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁性合金薄膜 / 反強磁性-強磁性転移 |
Research Abstract |
FeRh合金薄膜に微量に含まれていたy-FeRh相を除去するために、二元同時蒸着MBE法による高品質FeRh薄膜の作製に取り組み,面内、面直とも配向した単結晶薄膜試料の作製に成功した。二元同時蒸着MBE法による高品質FeRh薄膜作製の成功に伴い、FeRhの磁気相転移温度を下げるために三元同時蒸着によってRhをPdで置換したFeRbPd合金薄膜の作製を試みたが、磁気転移温度の低下は見られるが、磁気転移が散漫になっており転移温度を300K以下まで制御できるまでには至っていない。しかし、Gaを添加することで磁気転移温度が変調可能であることを見出し、磁気転移温度を290K付近まで低下させることに成功した。このときFeRhの格子は面内方向にはほとんど変化がないのに対し、面直方向ではGa添加に伴い格子が伸びており、結晶構造がbccからbctになったために強磁性状態が安定化したと推察される。このことは、FeRh合金系の磁気状態が基板からの圧縮応力による歪の効果で強磁性状態が安定化することを示唆している。また、FeRh合金から非磁性体へのスピン注入を評価する手法として、半導体量子井戸を利用したスピン注入効率評価を行う予定であったが、本手法を用いるためのFeRh合金の最適化に至っていない。しかしFe系合金であるFeGa合金を用いてAlGaAs/GaAs量子井戸へスピン注入を試みたところ、約22%のスピン注入効率が得られ、半導体量子井戸を利用したスピン注入効率評価手法の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
強誘電体の構造相転移に伴いFeRhの強磁性状態が安定化するなど、強誘電体の構造相転移を用いたFeRhの磁気転移制御の可能性を示唆する結果が得られたが、磁気転移制御の実現にまで至っていない。またPdを添加することで磁気転移温度の低下を目指したが、目的の温度まで低下させるに至っていない。しかし、新たにGaを添加することで磁気転移温度を290Kまで低下させることに成功した。FeRh合金から非磁性体へのスピン注入評価には至っていないが、FeGa合金を用いてAIGaAs/GaAs量子井戸へのスピン注入に成功し、半導体量子井戸を利用したスピン注入評価手法の準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
FeRhの磁気転移は格子歪の影響により変化することが分かってきた。GaまたはPdを添加したFeRhでは、その磁気転移温度が低く、強磁性状態がより安定化しているため、格子歪の影響を反映しやすい状態となっている。そこでGaまたはPdを添加して最適化したFeRhをBaTiO_3上に成長させ、FeRhの磁気転移をBaTiO_3の構造相転移を利用して制御することを目指す。また、GaまたはPd添加によって磁気転移温度を最適化したFeRh合金から、AlGaAs/GaAs量子井戸へのスピン注入を行うことでFeRhのスピン源としての評価を行う。
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Research Products
(7 results)