2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多孔体における気液流動現象の分子論的解明及びマクロスケールモデルの構築
Project/Area Number |
10J08412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三好 信哉 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロトン輸送 / Grotthuss機構 / 分子動力学法 / EVB法 / シリカ |
Research Abstract |
本研究は固体高分子型燃料電池などの次世代エネルギーデバイス内や生体内のエネルギー生成過程において現れる,ナノスケールの多孔体におけるイオン輸送,気液流動現象の解明を目指している.ナノスケールの小空間では界面の影響が顕著になり,また分子レベルでの知見の集積が重要になる.そこで本研究は古典分子動力学シミュレーションを用いて,これらの現象解明を目指す.本年度はナノスケールに閉じ込められた水分子ネットワークが持つ特異なイオン(プロトン)輸送現象の解明を目標とし,文献調査を行い未解明の課題の抽出と手法の選定を行った.プロトン輸送は化学反応の一つであり,古典MDシミュレーション上に再現するためにEmprical Valence Bonde(EVB)法を使用した.固体表面には実験において多くの知見が得られている親水性のシリカを採用した,界面の影響を評価するために,バルクと界面近傍双方の計算系を構築し,計算を行い結果を比較した.まず動的特性の調査を行い,界面近傍で構造化された水分子ネットワークにおいて,プロトン輸送の大きな特徴であるGrotthuss機構が促進されることが確認された.またGrotthuss機構の促進により,壁面と平行な方向の輸送特性が向上する結果が得られた.次に界面近傍で構造化された領域における構造の評価を行った.壁面法線方向の水,オキソニウムイオンの密度分布や動径分布を測定した.オキソニウムイオンは親水性界面に局在化し,周囲の水分子の構造がバルクと大きく異なることが分かった.親水性界面近傍におけるプロトン輸送促進の要因を解明することで,高速プロトン伝導素材の開発が促進されることが期待される.
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Research Products
(3 results)