2010 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー放射線によって発生する放射能の軽減と評価手法の確立
Project/Area Number |
10J08437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 達彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高エネルギ放射線 / 誘導放射能 / 加速器施設 / 放射能評価 / 放射化 |
Research Abstract |
本年度に実施した研究内容は、以下のとおりである。 「計画されていた放射線遮蔽実験の実施(ビームはC400 MeV/核子、計測位置はビームからみて横方向)、(ビームはHe 230MeV/核子、計測位置はビームからみて横方向)」「計画されていた14TeV陽子衝突によって発生する放射線の線量とその管理研究」「Heに照射された鉄ターゲットの放射能測定」「2つのシミュレーションコード(FLUKA,PHITS)による放射能生成の再現計算試験」 このうち、2件の放射線遮へい実験はこれまでに試みられたことがない実験であり、現行の高エネルギイオン加速器や陽子加速器の運用や廃止措置にあたって不可欠である加速器周辺の材料の放射化を測定した。Heによって照射されたターゲットの放射能も同様の価値がある。また、この3つの測定は、実験値自身が有用であるのみならず、計算コードとの比較を行って、それらのコードの精度を検証できた点も重要である。本研究を通してFLUKA,PHITS二種類の放射線輸送計算シミュレーションコードで計算を行い、実験値と比較することでコードの問題点指摘を行った。 本研究の中での最も重要な発見は、粒子線ガン治療施設で用いる230MeV/uのエネルギのヘリウム線が鉄ターゲットに照射されたとき、発生する中性子のうちエネルギが100MeVを超える成分は上記の計算コードどちらでも大幅に過小評価されてしまうことが判明した。これは鉄ターゲット周囲で発生する放射能の過小評価を意味し、安全上好ましくない結果である。これまでに公開された中性子線束の測定結果を基に、コードの改善をすることが望まれる。 また、同じく粒子線治療で用いられる400MeV/u炭素線についても、周辺の放射能の最大値が過小評価されることが示され、ヘリウム線の場合ほどではないものの、計算結果の評価には注意を要することが示された。
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