2010 Fiscal Year Annual Research Report
マニラにおける「スラム」空間の動態的研究―移動・世帯・住民組織のジェンダー分析
Project/Area Number |
10J08447
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
太田 麻希子 大阪府立大学, 人間社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | スラム / 農村-都市間移動 / 国際移動 / ジェンダー / フィリピン |
Research Abstract |
本課題は「移民の女性化」下における途上国都市のスラムをジェンター視点から動態的に捉えることを目的とし、マニラ首都圏ナボタスのスクオッター集落を調査対象に研究を進めている。本年度は移民を捉える理論枠組の研究に加え、過去に同調査地で収集したデータと前年度提出の博士論文を再検討、その深化と発展を試みた。その過程で、新たな作業仮説の構築と現地調査を実施した。 理論面では、新国際分業と「移民の女性化」の連続性をめぐる議論を検討した。博士論文の成果を踏まえ、ナボタスの産業構造や女性就労の特徴と、首都圏全体の傾向を比較、地方からの移民の受入地、海外への移民の送出し地としての両者の性格を考察した。その上で、「移民の女性化」下にありながら、「女性が国外に移動せず留まるのはなぜか」という問いを立て、スラムへの女性の流入と滞留の説明を試みた。先の理論枠組に加え、世帯内ジェンダー関係、世帯員男性の移動ネットワークを視野に入れながら、調査地の女性の農村-都市間移動および国際移動の経験と試みを分析・調査した。以上の過程では、前年度以前のデータとその分析の再検討に加え、新たな現地調査も実施した。 また、調査地の女性住民組織に関する過去のデータと博士論文でのその分析・考察を見直し、ナボタスの政治経済構造と関連させ、女性の住民組織活動の含意を検討、後述の報告書にまとめた。 移動とジェンダーに関する議論にスラムを位置づける試みは、途上国都市のスラム研究、フェミニスト的なグローバリゼーション研究双方において意義をもたらしたと言えよう。なお、以上の成果の一部は、大阪府立大学女性学研究センターのコロキウムや、人文地理学会全国大会にて発表済であり、論文として『女性学研究』や報告書(科学研究費補助金基盤研究(B)「ローカル・センシティヴな『開発とジェンダー』研究の構築を目指して」代表者・熊谷圭知)にも採録が決定されている。
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