2011 Fiscal Year Annual Research Report
マニラにおける「スラム」空間の動態的研究―移動・世帯・住民組織のジェンダー分析
Project/Area Number |
10J08447
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
太田 麻希子 大阪府立大学, 人間社会学部, 特別研究員PD
|
Keywords | 新国際分業 / 向都移動 / ジェンダー / 移民 / フィリピン |
Research Abstract |
2011年度は引き続き、近年の「移住労働の女性化」現象を踏まえてフィリピン・マニラ首都圏のスラムをジェンダー視点から分析することを試みた。具体的には以下のような研究活動を実施した。 (1)調査地であるスラムのある地域(マニラ首都圏ナボタス)のローカルな産業構造とジェンダー化された移住労働者の排出の仕組みを前年度の現地調査で得たデータと統計資料を元にして検討し、国際学会・国内研究集会で報告した。 (2)(1)で得た意見を踏まえ、議論を補強するために次の作業を行なった。まず、「移住労働の女性化」の基底にあると考えられる新国際分業下の「賃労働の女性化」と女性の向都移動に関する研究、加えて都市空間構造に関連する研究について、主に東南アジアにおける文献を中心に見直した。その上で、近年のマニラの空間構造の特徴を踏まえながら、調査地の女性住民の都市移住過程と就労に関するフィールド・データを検討し直した。 (3)(2)について、特に一人の元工場労働者の就労歴と移住歴に焦点を当て、国内研究会で発表した。 (4)日本国内とフィリピンにて、関連する統計・資料の収集およびその分析を実施した。 本年度は口頭報告を中心に他の研究者との対面での意見交換を行うことにより、研究へのフィードバックと評価を大いに得ることができた年であった。特に(1)の国際学会(国際批判地理学会)における発表が海外の地理学者らより好評を得たこと、(3)の研究会(国際ジェンダー学会『開発とジェンダー』分科会定例研究会)の発表内容について「開発とジェンダー」の研究者らと調査の微細に入った部分や今後の可能性にまで及ぶ深い議論ができたことは有意義な成果であった。 (3)で取り上げた元工場労働者の事例については、(4)の作業により、近年のマニラの製造業の動向と関連づけることでさらに完成度を高め、地理学系学会誌への投稿論文としてまとめている最中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地の移民の排出構造について前年度のデータを一部用い国内外で研究報告を実施した。そこでの反省点を踏まえ論文執筆と国際移動に関する調査にかかる前に、新たな課題として再度「賃労働の女性化」と女性の向都移動に焦点を当て、既存データ及び関連する統計等二次資料の詳細な検討をすることが妥当と判断した。「移住労働の女性化」の基底には女性賃労働の広範な発生があることから、以上の作業は国際移動に関わる本研究をより深化させたと言える。 現在、先に触れた新たな課題に関する研究論文を執筆しているが、既に一部の内容は国際ジェンダー学会「開発とジェンダー」分科会定例研究会にて好評価を得ており、その成果を高く期待できるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年度は引き続き論文を執筆するとともに、海外就労の研究調査を実施する。過去に得た海外就労者/経験者を抱えた世帯のデータとフィリピンの国際労働移動に関する先行研究を再検討し、リサーチクエスチョンをさらに詰めていく。これを含めた入念な下準備の上で、海外就労者/経験者の男女を抱えた世帯の本調査を遂行する。向都移動に関する補足調査も行い、ジェンダー化されたグローバルな移動の回路とその地域性を明らかにする。途中経過・成果については、国内外の学会・研究会で報告するとともに、投稿論文として発表していく。
|