2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J08609
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 博之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アメリカ文学 / 合衆国南西部 / 文学と越境 |
Research Abstract |
現代の合衆国南西部で書かれる文学の全体像を考えていくことが本研究課題の最終的な目標であるが、今年度はとくに本課題の中心となる作家であるコーマツク・マッカーシーの小説についての研究を中心に進める計画をしていた。実際にマッカーシーの作品や合衆国南西部の文学全般についての先行研究、歴史や文化的背景に関係する関連領域の資料などを収集・調査しながら、最終的には博士論文へとつながる自分の論考の土台となる考えを築いていくことができた。第1年度目のあいだに論文や口頭発表というかたちで研究成果を発表することは残念ながらできなかったが、これは研究を進めるうちに、以前は想定していなかった問題に出会ったり、これまでは知らなかった作家の重要性に気付いたりし、研究計画にある程度の方向修正が必要であると感じたためである。具体的に転機となったのは、小説や先行研究を読み進めるうちに、この地域における口承文学の重要性を認識したことである。口承文学から小説というジャンルへの変遷を考えることによって、南西部の文学の特色についてだけでなく、小説とはなにかという根本的な問題にも一定の答えを与えることができるのではないかと考えるにいたった。そのことと関連して、当初は研究対象とする予定ではなかったフォークロア研究者であり小説家・詩人でもあったアメリコ・パレデスの著作を知ったことも重要である。また、2011年3月には科学研究費補助金を利用して合衆国のテキサス州に渡航し、調査を行う機会を持つことができた。テキサス大学オースティン校やテキサス州立大学サンマルコス校におさめられている資料を閲覧し、短期間ではあったものの合衆国南西部の風土に触れたことは貴重な体験であった。第2年度目以降は広がっていく関心全体に博士論文につながるような方向性を与えつつ、論文の投稿や口頭発表の機会を積極的につくっていきたい。
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