2012 Fiscal Year Annual Research Report
多重極限環境下NMR法を用いた強相関電子系の新奇な量子相と相転移の研究
Project/Area Number |
10J08690
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山内 一宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 博士研究員
|
Keywords | 量子スピン系 / 核磁気共鳴 / 高圧実験 |
Research Abstract |
本研究では、低温、高磁場、高圧などの極限環境下で出現する新奇量子相の研究を進めることが課題である。二次元直交ダイマースピン系SrCu2(BO3)2は、シャストリー・サザーランド模型と呼ばれるスピン模型のモデル物質として知られ、その基底状態は、常圧、零磁場の下では非磁性シングレットダイマー状態であるが、高磁場下においては磁化プラトー相が、2.4GPaの高圧下においては新奇磁気相が見出されている。本年度、我々はこのSrCu2(BO3)2の高圧下において見出された新奇磁気相をより詳細に理解するため、11B核のNMRスペクトルの詳細な圧力依存性を測定した。その結果、以前の高圧下NMR実験では見られていた、正方晶から斜方晶への構造相転移を示す11Bスペクトルの分裂は今回の実験では見られなかった。この結果は、昨年度SPring-8で行われた粉末X線回折実験において、明確な構造相転移が見られなかったことと整合している。従って、以前の高圧下NMR実験で見られた構造相転移は、静水圧性の低下などの外的要因によるものと考えられる。一方、非磁性ダイマーと磁気的ダイマーの共存を示すスペクトルの分裂は、前回と同様に観測された。正方晶を保持したまま非磁性ダイマーと磁気的ダイマーが共存する原因は現時点では不明だが、最近、歪んだシャストリー・サザーランド模型においてハルデン鎖的な振る舞いが理論的に予想されており、今回の実験結果との関連が期待される。
|