Research Abstract |
本研究は,日本産潜葉性小蛾類の種の解明と系統分類を行い,潜葉性小蛾類の種多様性・潜葉習性の進化を明らかにする.本年は,近畿地方を中心に山形県から沖縄県の日本各地で調査を行い,ブナ科,カバノキ科,クスノキ科などの多数の寄主植物から幼虫を採集した.特にホソガ科コハモグリガPhyllocnistis属では,多くの学名未決定種を認め,ヤナギ類からは,ネコヤナギなどの葉に潜る1新種,2既知種の計3種を認め,現在成果を投稿中である.新種とヤナギコハモグリの2種は,寄主植物の葉,茎上にそれぞれ同時期・同所的に発生するが,前翅斑紋・雌雄交尾器などの形態形質及び,分子解析でも別種であることが支持された.DNAバーコード領域のmtDNAのCOI領域の一部の本属の利用可能性を検討し,利用部位が異なる2種の潜孔習性の進化についても議論した. オビギンホソガ亜科のCorythoxestis属とEumetriochroa属の2種を中国から新記録し,走査型電子顕微鏡を用い,蛹の形態を観察・比較した.本亜科と分類位置が議論されているコハモグリガ属との蛹の比較を行い,本亜科の所属を検討した. ホソガ科カワホソガSpulerina属では,従来の形態形質とmtDNAのCOI領域の一部を用いた分子解析,幼虫,蛹の形態比較を行い,成果発表に向け準備中である. また,潜葉性昆虫全般の採集も並行して行い,これまでに100種以上を採集している.特に本年は,スキャナを導入し,潜り痕のある葉や枝をデジタル標本化した.今後,潜葉性小蛾類を中心とした検索システム等の作成を予定している.
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