2011 Fiscal Year Annual Research Report
文化的な創造活動への広域的共同支援に関する国際研究―ドイツと日本を例に
Project/Area Number |
10J08764
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋野 有紀 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化政策 / 劇場 / 舞台芸術 / ドイツ / 対外文化政策 / 芸術文化支援 / 地方自治体 / 欧州連合 |
Research Abstract |
『文化的な創造活動への広域的共同支援に関する国際研究-ドイツと日本を例に』をテーマに、今年度は以下の研究を行った。日独両国では近年、公共サービス自由化の影響により、文化施設に対する従来型の財政支援方法が揺らいでいる。本研究は、それが財政危機のみに起因するものではないという視点に立ち、グローバル化による人間の移動の加速化が、芸術作品の提供者(文化施設・創造者・実演家など)と享受者(観客)との関係を複雑化させ、従来の属地主義的な支援方法が現在の社会情勢と乖離してきていることを明らかにすることを目的としている。超域的な支援の分散が、むしろ芸術文化振興へのインセンティブを増加させることを示し、文化施設に対する超地域的な共同支援導入の可能性を提示するために、本年度は前半で、前年度の調査の不足を補いつつ、議会議事録の調査・分析により、ドイツのフォーサイス・カンパニーへの支援制度について、制度誕生に至る詳細な経緯を明らかにした。調査の過程では、域外の住民が地域の文化施設を利用していることが問題となり、自治体間で負担を分配する制度が構築された経緯が明らかになり、人の移動と制度の変化に一定の関連があることが明らかになった。この内容は、前年度の成果とともに文化経済学会<日本>にて口頭発表を行い、会場の議論から有益な示唆を得た。後半は、国際的な舞台芸術事業における協働のあり方について、その実践の移り変わりとその理念的根拠を明らかにすることに務めた。そのためのアプローチとして、政策理念面での変化に焦点を絞り、一次資料を収集するとともに、関係研究所、政策担当者への聞き取りを実施した。その結果、国家を単位としてきた従来型の文化交流事業に動揺が生じ、欧州連合を単位とした国家間共同事業を促進する動きが生まれていることが明らかになった。この調査で明らかになった成果の一部は、『芸術と環境 劇場制度・国際交流・文化政策』(伊藤裕夫・藤井慎太郎編、論創社)の中で論文「ドイツ対外文化政策における理念の変遷と近年の課題-「対話的な文化交流」を目指して」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度と本年度前半に行った調査研究の成果を中間報告として学会発表としてまとめ、後半では超域的芸術環境支援についての理論的考察に着手することができた。この考察について、一部分はすでに3月に出版するなど、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の文化団体への具体的な調査を計画にそって実施し、これまでドイツ、欧州連合を対象として行なってきた研究とあわせて成果を形にし、国際学会あるいは国際シンポジウムで発表を行いたい。
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Research Products
(4 results)