2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアの機能変化が神経変性時の軸索と髄鞘に与える影響の解析
Project/Area Number |
10J08791
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
高田 仁実 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第五部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 神経変性 / ミエリン崩壊 / NAD合成酵素 |
Research Abstract |
神経変性とは神経系における様々な病理的過程において観察される現象である。自然発症変異マウスwldsは、このような神経変性が著しく遅延する表現型を示すことが知られている。先行研究により、wldsマウスの神経変性遅延の表現型は、UFD2aとNAD合成酵素NMNAT1のキメラタンパク質(wldsタンパク質)の発現による機能獲得変異によって引き起こされることが明らかとなっている。さらにミトコンドリアに主に局在するNAD合成酵素NMNAT3を発現するトランスジェニックマウスにおいてwldsマウスと同様な軸索変性遅延効果を示したことから、ミトコンドリアにおけるNMNAT過剰発現が軸索変性遅延効果に重要であることが示唆された。私は、NAD合成酵素NMNATの過剰発現が軸索と髄鞘に与える影響を調べるため、今年度はwldsマウスにおける傷害後坐骨神経の詳細な形態観察を行い、以下の2点を明らかにした。(1)widsタンパク質が軸索に与える影響を検討するため、傷害後坐骨神経の横断面を光学顕微鏡で観察した結果、坐骨神経中の軸索において変性から保護できる軸索と保護できない軸索とが存在することが明らかとなった。これら軸索の違いを明らかにすることは、wldsタンパク質が軸索を保護するメカニズムを解明するうえで今後重要な手がかりとなることが予想される。 (2)wldsタンパク質が傷害後坐骨神経の髄鞘に与える影響を明らかにするため、電子顕微鏡による観察を行った。その結果wldsタンパク質の発現が、神経変性時の髄鞘におけるシュワン細胞の分化・増殖過程に影響を与える可能性が示唆された。この分子メカニズムを明らかにすることにより、NAD合成酵素の過剰発現による代謝状態の変化と細胞の分化・増殖過程の変化とをつなぐメカニズムの解明が期待される。
|