2010 Fiscal Year Annual Research Report
イソシアノ酢酸誘導体の不斉付加反応を基盤とした天然神経毒アミノ酸類の全合成研究
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10J08802
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大江 健太郎 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カイニン酸 / イオンチャネル型グルタミン酸受容体 / アゴニスト / イソシアノ酢酸誘導体 / マイケル付加-環化反応 / 銅触媒 |
Research Abstract |
カイニン酸は海人草から単離・構造決定され、戦後、回虫駆除薬として利用されたアミノ酸である。後に、カイニン酸が脳の特定部位を破壊しててんかん様の作用を引き起こすことが明らかになり、現在ではカイニン酸受容体サブタイプのアゴニストとして神経科学分野に広く用いられている。キノコ・ドクササコから見出されたアクロメリン酸はカイニン酸を遥かに凌ぐ興奮作用を示すことから、その供給が脳神経研究分野から切望されている。しかし、微量成分であり薬理学的詳細の調査には効率的な全合成による量的供給が必要である。そこで、カイニン酸およびアクロメリン酸の効率的供給経路の確立を目指し研究を開始した。 カイニン酸の全合成の課題は、ピロリジン環上の3連続不斉中心の立体制御、および量的供給のための短段階経路の確立である。そこで、不斉補助基としてカンファースルタムを有するイソシアノ酢酸アミドと5-オキソ-3-ヘキセン-tert-ブチルエステルとのマイケル付加環化反応を試みた。その結果、カイニン酸の炭素骨格をほぼ満足する2,3-trans-ピロリンが一段階で構築できた。次いで、C4位の不斉中心はC2位のカルボキシ基を無保護で還元することで構築できた。最適化の結果25:1に選択性を向上でき、得られたメチルケトン体へのメチレン基の導入と脱保護を経てカイニン酸の全合成を達成した。本合成は全9段階通算収率16.8%であり、既存のカイニン酸の全合成の中でも最も高効率な全合成と位置付けられる。 本全合成の鍵反応であるマイケル付加環化反応は高い汎用性が期待される。そこで、電子求引基としてピリドンカルボン酸等価体を有するマイケル受容体を用いたアクロメリン酸Aの合成経路を立案した。現在までにマイケル受容体の合成に成功している。マイケル付加環化反応によるピロリン骨格の構築、およびアクロメリン酸Aの全合成の達成が次年度の課題である。
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Research Products
(4 results)