Research Abstract |
本研究は,連続的な筋収縮後の血流調節メカニズムを,生体顕微鏡によるラットの脊柱僧帽筋を対象としたin vivoモデルを用いて,筋収縮後の微小血管内径動態および筋細胞内イオン動態の定量により明らかにすることを目的としている.研究項目1では,連続的な筋収縮後における末梢血管動態の評価をおこない,筋収縮と交感神経活動の両方を活性化する条件では,筋疲労の進行にともなった細動脈特異的な血管収縮応答の増大が生じることが明らかになった.このことは,細動脈血管緊張を決定する種々の代謝産物による血管拡張作用と交感神経性血管収縮作用とのバランスが収縮作用優位になることを示し,筋疲労時において,機能的交感神経遮断作用が減弱することが明らかになった.研究項目2-1~3では,連続的な筋収縮後の筋細胞代謝動態の評価を,細胞内のCa^<2+>,pHおよびNa^+動態に焦点を当てておこなった.その結果,雄ラットにおいて筋収縮により細胞内のCa^<2+>蓄積が生じ,疲労の進行とともにCa^<2+>の蓄積も増大すること,また,そのCa^<2+>蓄積は雌や卵巣摘出ラットでは生じないことが示された.2-2では連続的な筋収縮により初期張力が70%程度低下した筋疲労時においても,pH変化は生じないことが示され,この筋細胞内pH恒常性の維持には乳酸-H^+交換体(MCT)が関与することが示唆された,2-3では本モデルにおけるNa^+感受性蛍光色素のキャリブレーションをおこなった.細胞外液のNa^+濃度変化に対する蛍光強度変化が小さいことから,正確な濃度変化の測定には至っていない.今後は,筋細胞への蛍光色素の導入方法の改善とin vitoキャリブレーション法の確立を目指す.さらに,研究項目1および2より得られた結果から,それぞれの動態の同時計測法の確立へと発展させ,測定の再現性を確認するとともに,筋疲労時の代謝動態の可視化を目指す.
|