2010 Fiscal Year Annual Research Report
光格子にトラップしたストロンチウム中性原子を用いた量子エンタングル状態の生成
Project/Area Number |
10J08896
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋口 幸治 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(D1)
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Keywords | 光格子 / ストロンチウム / 中性原子 / 量子エンタングル状態 |
Research Abstract |
ストロンチウム原子の5s5p3P2-5s4d3D3の遷移波長は約2.9μmと、他の同類原子と比べても非常に長い。この長波長遷移を用いた応用として、量子エンタングル状態の生成を目指している。この遷移は遷移波長が正確に求められていないため、その測定の意味も含めて、まずはこの遷移を用いた磁気光学トラップ(MOT)の生成を試みることにした。MOTの生成を行うことで、偏光勾配冷却が働き、nKオーダーの極低温原子の生成が可能であると期待していた。 まずはMOTの生成に成功し、温度の測定を行ったところ、20μK程度であった。nKオーダーまで冷却できてない理由として、MOTの磁場によるゼーマンシフトが考えられた。そこで、磁場を下げて温度を測定したところ、到達温度の減少が見られた。そこで、最終的には磁場を切った状態、三次元モラセス中での偏光勾配冷却を行った。レーザーの周波数や強度を調整することで、最終的に1μK程度まで冷却することができた。 さらなる冷却ができなかった理由として、レーザーの周波数揺らぎが考えられた。現在、光源としては光パラメトリック共振器(OPO)を用いており、その周波数安定化を、光周波数コム(ファイバーコム)を用いて行っている。理論上は、コムの安定度をそのままOPOの安定度に移行させることができるため、今回用いる遷移の線幅(約39kHz)に対して、十分狭い線幅となるように設計してあったが、外乱などの影響によって、周波数が振動してしまっているようであった。そこで、レーザーをより安定にするための作業を行った。まず、外乱の影響を受けにくくするために、現在備えつけられているレーザーの箱を外し、箱と共振器が独立するように自作した。また、レーザーの固定の仕方を変えてみたり、周りに囲いを作ったりすることで周波数の振動を抑えることに成功した。周波数安定化による最終的な冷却到達温度の測定はできていないが、最終目標である量子エンタングル状態の生成においてはレーザーの安定度が非常に重要になるので、この成果は重要なものであったと考えられる。
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