2010 Fiscal Year Annual Research Report
アンドレ・ブルトンの芸術空間――神話発生のオートマティスムと記号の反転
Project/Area Number |
10J08901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前之園 望 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランス文学 / 20世紀 / フランス現代詩 / アンドレ・ブルトン / シュルレアリスム / オートマティスム / 新しい神話 / 透明な巨人 |
Research Abstract |
本研究の目的は1947年のパリ・シュルレアリスム国際展の分析を通して、アンドレ・ブルトンの芸術空間の独自性を明らかにすることである。本研究の成果は三部構成の論文として発表される予定であり、本年度は第一部にあたる以下の主題を中心に研究を進めた。すなわち、ブルトンにおけるオートマティスムの概念が1930年代以降からその領域を拡大すること、及びこの領域拡大が造形芸術・言語芸術の両分野において並行して起きていることを実証し、その推移をたどることで、絶えず生成状態にあるブルトンの詩学の全体像を、動的な状態のまま浮き上がらせる、という主題である。本年度は、研究指導委託によりリヨン第二大学(フランス)において研究活動を行った。研究活動は資料収集および論文執筆を中心に進められた。また、現地の研究者との個別の意見交換を通して、研究の客観性と妥当性の獲得を図った。特に、シュルレアリスム研究の第一人者であるドミニック・カルラ氏と定期的に討論の場を設けることができたことは、大きな収穫であった。本研究では、アンドレ・ブルトンの詩作品に対する正確な解釈が求められる。恣意性を排除し、解釈の客観性・妥当性を向上させ、解釈の精度を高めるには、専門的知識を備えたフランス語圏の研究者の反応を確認する必要があるため、テーマごとにフランス語で論文執筆を行い、フランス語を母国語とする専門研究者たちの反応を確かめた。 本年度の出版物に関しては、2010年4月に平凡社より出版された『〈前衛〉とはなにか?<後衛>とはなにか?』において、日本学術振興会特別研究員として、論文執筆及びカルラ氏の論文翻訳を行った。また、8月には日本フランス語フランス文学会の全国学会誌に、やはり日本学術振興会特別研究員として、査読論文が掲載された。
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