2010 Fiscal Year Annual Research Report
マウス嗅覚系における嗅細胞の軸索投射メカニズムの解明
Project/Area Number |
10J09693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井ノ口 霞 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 嗅覚受容体 / 軸索ガイダンス / 僧帽・房飾細胞 / 神経回路形成 |
Research Abstract |
マウス嗅覚系における神経地図形成に関しては、嗅球の背腹軸に沿って嗅上皮と投射先である嗅球との間に空間的な対応関係が存在することが知られている。しかしながら、何がその位置情報を担っているかその具体的な分子実態やメカニズムについては明らかにされていなかった。我々は、嗅上皮で濃度勾配を示して相補的に発現している軸索ガイダンス分子Neuropilin2(Nrp2)とその反発性ligandである分泌型Seam3Fに着目し解析を行った。遺伝子操作マウスを用いた今回の実験により、Nrp2とSema3Fの反発性の相互作用が、嗅細胞の背腹軸方向の軸索投射の制御に関与していることが判明した。 次にこの嗅覚神経地図が機能的に働くためには、嗅細胞が二次神経である僧帽細胞の主樹状突起と正確に接続する必要がある。僧帽細胞は胎児期に脳室帯から嗅球へと移動し、やがて糸球層の内側に正しく配列して嗅細胞の軸索とシナプス形成を行う。では、僧帽細胞はどのようにパートナーである嗅細胞の軸索と適切なシナプスを形成しているのだろうか。我々は今回の研究で、腹側の僧帽細胞は腹側の嗅細胞軸索と同様、Nrp2を発現しており、その発現分布はNrp2を発現する嗅細胞の投射領域と一致していることを見出した。更に遺伝子操作マウスの解析により、嗅細胞由来のSema3Fが僧帽細胞の細胞体の誘導及び配置にも関与していることが明らかとなった。今回の研究により、背側嗅細胞由来の共通のligandが嗅細胞の軸索と僧帽細胞を共に背腹軸に沿って配向させ、両者間の適切なシナプス形成を可能にしていることが判明した。今回の研究は、神経地図を介して接続する2種類の神経細胞の集団が、シナプス形成の為にどの様に持ち寄られるのかという、脳研究全体の重要問題に糸口を与えたという意味で重要であると考えられる。
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