2011 Fiscal Year Annual Research Report
原爆に関する言説と表象をめぐる歴史研究―1920年代から40年代の日本の中心に
Project/Area Number |
10J09766
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中尾 麻伊香 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原爆 / 原子力 / GHQ / プレスコード / 原爆調査 / 広島・長崎 / 科学言説 / サイエンスフィクション |
Research Abstract |
本年度は研究目的のなかでも原爆投下以前から以後にかけて言説がどのように引き継がれ変容していったかという点を考察し、原爆投下以降を扱った先行研究との議論の接続を試みた。具体的には以下のように検討をすすめた。 (1)原爆投下以降の原爆/原子力に関する言説を検討した。新聞や雑誌から、原爆/原子力に関する記述を調査し、その変遷を捉えた。この内容を2011年12月に東工大の火曜ゼミで「核をめぐる言説と日本の科学者:戦時中から戦後にかけて」というタイトルで報告した。 (2)原爆調査に関する先行研究を整理し、原爆調査の歴史研究における課題を検討した。この内容を2011年9月に生物学史研究会夏の学校で「放射線をめぐる言説:原爆調査からビキニ事件まで」というタイトルで報告し、『生物学史研究』に投稿した。また、長崎原爆資料館、永井隆記念館、長崎大学医学部などで資料調査を行った。 (3)1940年代後半の全国紙と地方紙にあらわれた原爆症に関する言説を検討した。原爆被害をめぐる言説が全国紙と地方紙で異なることを確認し、その背景にある力学を分析した。この内容を2012年3月にAssociation for Asian Studiesの年会で"Radiation Sickness, Popular Medical Discourse, and Social Discrimination in Early Postwar Japan"というタイトルで報告した。 (4)研究目的の一つに挙げていたアーカイブへの貢献については、故・西脇安(放射線防護)の資料整理を行い、資料のアーカイブ化に尽力した。国際シンポジウム「核時代の記憶と記録-原爆アーカイブズの保存と活用-」に参加し、日米のアーキビストとの交流をはじめた。 以上の研究と平行して、これまでに得られた成果をまとめ博士論文の執筆を開始した。
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