2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J09885
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
吉永 匡史 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本古代史 / 軍事制度 / 交通検察 / 律令 / 天聖令 |
Research Abstract |
平成23年度(第2年度目)の研究状況についてはじめに特筆すべきは、平成22年度末に提出した博士論文「律令軍事構造の研究」の審査が実施され、2011年6月16日付で博士(文学)の学位を取得した点である。研究題目に即した内容で構成しており、新稿部分は順次公表予定である。 天聖令を中心とした律令制研究に関しては、東方学会若手研究者支援事業研究会「中国北宋天聖令を用いた日唐律令制比較の基礎的研究」において、「律令制と軍事制度研究」と題して軍事力にかかわる篇目である軍防令と関市令についての口頭報告を行った。報告後、論文「軍防令研究の新視点」を執筆し、『律令制研究入門』(名著刊行会、2011年)の第2部第2章として公表した。日唐軍防令の復原・比較研究の研究史整理のほか、烽関係条文の日唐令の相違について具体的に考察した。天聖令残本に含まれていない篇目に対し、天聖令研究をどのようにフィードバックするかという観点からの研究は殆ど無く、新たな研究手法・視点を提示できたと考えている。 次に、関を筆頭とする交通検察と軍事力との関係性という観点から、論文「律令制下における関〓の機能」を執筆・投稿した(なお本稿の掲載号は現時点で未定である)。旧稿で律令関制度の検討を行ったが、論文の主眼は唐代の関制度の解明にあったため、本稿では日本古代の関制度に焦点をあてて考察した。 その結果、8世紀以後の古代日本では関と〓の二重構造がとられていたことが判明し、関市令に規定する日本の関制度は、唐のそれと同様に京師防衛を主眼としていたことが明らかとなった。 軍事制度研究については、東方学会若手支援研究事業研究会「コミュニケーション・ヒストリーの試み」において、「日唐征討軍の内部秩序と専決権」と題して口頭報告を行った。本報告では軍防令大将出征条に焦点をあて、唐令条文の復原研究を軸としながら、日本の征討軍と唐の行軍それぞれの内部秩序と、出征将軍がもつ死罪専決権について明らかにした。 以上、本年度では日唐の律令制と軍事制度について、新たな視点で研究を進展できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本と唐の軍事制度や、これに関連する諸制度(交通検察など)についての史料精読、関連文献の精査を着実に進めており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
博士論文の新稿部分を査読雑誌に投稿し、公表することをまず優先する。並行して、平成23年度中に行った日唐令の比較研究や日唐の軍事制度についての口頭報告内容を、順次成稿・公表していく予定である。律令関連の諸写本・版本(漢籍)についての史料調査もあわせて実施していきたい。
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