2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代移行期のインド洋海域における国家・外交・通商:ブー・サイード朝を中心に
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10J09938
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片倉 鎮郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インド洋 / 港市 / 近代移行期 / 通商条約 / 領事 / 海域史 / インド |
Research Abstract |
本年度は、まず前年度の調査で収集した資料の整理・分析を進めた。そこから得られた成果の一部は、史学会大会における口頭発表(2011年11月)、科学研究費補助金(基盤研究S)「ユーラシアの近代と新しい世界史叙述」主催「商館研究会」における報告(2012年1月)として公表済みである。また資料の分析結果から、19世紀インド洋における地域システムについて明らかにするには、ブー・サイード朝が欧米各国と結んだ通商条約の前後における制度変化を解明することの重要性が明らかになった。そのため、資料収集については当初の予定を変更し、2月から3月にかけてインド共和国を再訪し、マハーラーシュトラ州立文書館(ムンバイ)およびインド国立公文書館(デリー)にて資料の調査・収集を行った。今回将来した資料の具体的な分析は緒についたばかりであるが、通商条約締結後、本国政府から領事の資格を得てブー・サイード朝領の港市に駐在した英東インド会社職員と、彼らを指揮したボンベイ政庁との具体的なやり取りが明らかになってきている。従来の研究では、多くの場合インド政庁と本国政府は弁別されず、彼らはただ「イギリス領事」とされ、史料としても彼らと本国外務省との通信ばかりが注目されてきた。しかしボンベイ政庁との通信を分析することで、19世紀中葉の地域の変容をよりきめ細やかに知ることができるはずである(なお、2012年6月にはその成果の一部をヘント大学(ベルギー)で開催される国際会議において報告することが決定している)。来年度は、これを補完するものとしてのイギリス本国外務省との通信、また比較すべきものとして米・仏両国領事の関係資料の収集を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進展に伴い、研究トピックについてはよりふさわしいものへと変更しているが、研究目的は着実に達成に向かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度・本年度におけるインド調査の成果に、英米仏の外務省史料を加えることで、より立体的に当時のインド洋海域の地域システム・制度変化が明らかになろう。そのために来年度にはこれら諸国における文書館調査を予定している。
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