2010 Fiscal Year Annual Research Report
化学的物質設計とダイナミクス測定による高機能層状酸化物超伝導材料の開発
Project/Area Number |
10J09997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 悠衣 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 希土類123銅酸化物超伝導体 / 新規超伝導体 / カゴメ格子 |
Research Abstract |
初年度においては、MOD薄膜の作製手法の最適化を行い、高品質Y123-MOD薄膜の作製のための基盤を確立した。具体的には、原料として用いる有機金属錯体溶液の種類が、生成するY123薄膜の超伝導転移温度や結晶成長に大きく影響することが判明した。適切な有機金属錯体溶液の選択に加え、焼成温度の最適化によって、高品質のY123薄膜を得ることに成功した。 また、次年度以降予定していた研究課題も積極的に推進した。具体的には、近年研究が盛んな鉄系超伝導体において、独自の視点から類縁物質の合成に取り組み、期待した超伝導は示さなかったものの、スカンジウムをベースとする新物質の合成に成功した。さらに、銅酸化物超伝導体や鉄系超伝導体と同じく二次元伝導面を有すが、既存の正方格子ではなく、三角格子やカゴメ格子と呼ばれる格子を有す物質群の合成に新たに着手した。これらの物質に対しては、これまで絶縁体に対する興味が中心であったため、超伝導化の観点からの研究例は少なかった。しかしながらTcは状態密度と相関があるため、格子の2次元性に由来して高い状態密度が予想されるこれらの物質は、高いTcを示す可能性がある。さらに、三角格子やカゴメ格子を構成する原子による遍歴電子のスピン間に反強磁性的相互作用が働く場合には、これらの遍歴電子間にフラストレーションと呼ばれる効果が働くことが考えられる。従って超伝導のみからず新規低温物性の開拓につながる可能性も高く、今後の成果が期待できる。
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