2012 Fiscal Year Annual Research Report
化学的物質設計とダイナミクス測定による高機能層状酸化物超伝導材料の開発
Project/Area Number |
10J09997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 悠衣 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カゴメ格子 / 平坦バンド / カゴメ金属 |
Research Abstract |
本研究ではこれまで新機能性層状化合物の開拓を目的として研究を進めてきた。本年度は、前年度に引き続きカゴメ金属における新奇物性探索を行った。カゴメ格子上の電子系では分散のない平坦なバンド構造が現れることが知られている。この平坦バンドに由来したエキゾチック物性の発現を狙い、平坦バンドをフェルミエネルギー(E_F)付近に持つ物質の探索を行った。Crがカゴメ格子を形成するYCr_6Ge_6について、単結晶育成と物性評価を行ったところ、磁化率がCurie-Weiss的に温度変化し、電子比熱係数はバンド計算値より2倍増強されていることがわかった。加えてWilson比が2であり、電気抵抗率にT^2依存性が見られることから、本系が強相関電子系であることが示唆された。また興味深いことに、層状化合物には珍しく、面間よりも面内の電気抵抗率が大きいという事実を明らかにした。バンド構造計算によると、この物質ではP点からM,K点までの一部にかけて、Crの3dz^2軌道からなる平坦バンドをE_F直下に有していることが分かり、面内での高い電気抵抗率やγの増大は、この平坦バンドの存在に由来していると考えられる。本研究は、これまで理論中心だった平坦バンド研究に対する初めての物質科学的アプローチであり、今後の平坦バンド研究の足がかりとなるものと考えている。 さらに本年度は、前年度の研究を発展させる形でカゴメ金属における新たな物性開拓を開始した。特に、カゴメ格子が持つ空隙に注目し、遷移金属からなるカゴメ格子を有する層状カゴメ酸化物絶縁体について、異種金属元素をドープすることにより超伝導などの新規物性発現を試みた。現在、得られた試料の構造解析や詳細な物性評価を行っている。
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