2010 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン性脂質とDNAが形成する高次構造と機能の相関
Project/Area Number |
10J10006
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
西村 智貴 北九州市立大学, 国際環境工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カチオン性脂質 / DNA / 遺伝子導入伝 |
Research Abstract |
カチオン性脂質とDNAが作る複合体は多彩な高次構造を形成し、その構造は遺伝子導入効率に影響を与える重要な要因の1つと考えられるようになった。これまでに、様々な手法を用いて複合体の構造解析が行われているが、用いた脂質の種類によって導入効率と構造の相関は異なり、結果的に何が機能に影響を与えているのか明らかになっていない。そこで、前年度は、我々の研究室で開発されたカチオン性脂質DAを用いて、複合体の基礎研究として、構造解析や相互作用の熱力学的解析などを行った。一般的に、分子集合体とDNAのような高分子との相互作用は低分子一低分子の相互作用に比べ、系が複雑化し解析を困難にする。そこで、DA脂質1DNA複合体とDA脂質/金属イオン複合体の高次構造形成を比較し複合体形成メカニズムの解明を試みた。DA脂質にDNAを添加するとベシクルからラメラ構造へと変化することがわかった。アルキル鎖の長い脂質(C18)と短い脂質(C6)のDNA複合体を比較すると、DA(C18)1DNA複合体ではラメラ由来のピークがブロードに対し、短いものでは鋭いピークが観察された。これは複合体形成には、脂質のカチオンだけではなく、アルキル鎖の寄与もあることを示唆している。DA脂質はヘッドグループにエチレンジアミン基を有しており、金属イオンとの親和性が高いと予想される。そこで、脂質分散液に銅イオンを添加した所と、ラメラ構造を形成することが判明した。DA脂質とDNA及び銅イオンとの複合体形成を等温滴定型熱量計を用いて相互作用の熱力学的解析を行ったところ、DNA複合体では吸熱反応であり金属イオンでは発熱反応であった。金属イオンとの複合化は主に静電的な会合によるものと考えられる。一方で、DNAとの複合はDNAとの会合に伴うリン酸基周囲やDNAグループの脱水和によるものと考えられた。このことから、DNAとの複合化に際しまず、脂質がDNAのリン酸基及びグループに会合し、ベシクルが崩壊する。次いで脂質の疎水面を隠すように脂質が再配列することでラメラ構造を形成するものと結論づけた。
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[Journal Article] Synthesis of a highly hydrophobic cationic lipid and structural and thermodynamics studies for interaction with DNA2010
Author(s)
Tomoki Nishimura, Takeshi Cho, Andrew M.Kelley, Magdalena E.Powell, John S.Fossey, Steven D.B Bull, Tony D.James, Hiroyasu Masunaga, Hiroki Ogawa,lsamu Akiba, Kazuo Sakurai
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Journal Title
Bulletin of the Chemical Society of Japan
Volume: 83
Pages: 1010-1018
Peer Reviewed
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